「面接でCopilotを使っていいと言われたので、普段どおり書いたら見送りになりました。使っていいのに、なぜ落ちるんですか」——最近、こういう相談を受けるようになりました。
私はIT・Web業界を中心に800名以上の転職支援に携わっていますが、AI利用を認める技術面接では、問題が解けたかどうかよりも、AIが出したコードを候補者がどう扱ったかに評価の重心が移っているように見えます。今回は、AI使用可の面接で見られる点と、AIの出力を検証して口頭で説明するための準備を、職種別と応募先への確認方法まで含めてお伝えします。
今回は、次の内容に沿ってご紹介します。
- AI使用可の面接が実際にどこまで広がっているか、分かっていることと分かっていないこと
- 海外企業の公開情報から読み取れる評価ポイントと、「解けるか」からの評価軸の移り方
- AIの出力を検証して説明する準備の手順と、バックエンド・フロントエンド別の検証の観点
- 応募先にAI利用方針を確認するときの具体的な聞き方
目次
AI使用可のコーディング面接は、いまどこまで広がっているのか
最初に、分かっていることの範囲をはっきりさせておきます。海外では、AI支援ツールの持ち込みを認める技術面接を公式に打ち出す企業が出てきました。たとえばデザインツールを提供する海外企業のエンジニアリングブログ「Yes, you can use AI in our interviews」(2025年6月)では、バックエンド・機械学習・フロントエンドの候補者に、CopilotやCursor、Claudeなど普段使っているAIツールを面接に持ち込むことを期待し、事前に告知していると書かれています。
一方で、AIの利用を認めない選考を続けている企業もあります。つまり、海外では「解禁する会社」と「禁止する会社」が並走している状態です。
国内はどうか。私が調べた範囲では、日本企業でAI使用可の面接を公式に実施している具体例は確認できていません。ですので「日本でも当たり前になってきた」とは言いません。私の担当範囲でも、選考案内にAIの扱いが書かれているケースは、外資系や海外展開に積極的な企業のごく一部で見かける程度です。
この段階で大事なのは、流行を追うことではありません。応募先ごとに「使えるのか、使えないのか」が違うことを前提に、どちらに転んでも困らない準備をしておくことです。AIを使う面接でも、使わない面接でも、土台になる力は同じだからです。
評価軸は「解けるか」から「検証して判断したか」に移っている
AIを使っていいなら、誰が解いても答えのコードは出てきます。だとすれば、面接官は何を見て差をつけるのか。公開されている企業側の説明を読むと、かなり共通した観点が見えてきます。
先ほどの海外企業のブログでは、評価するのはAIの使いどころ、曖昧な要件の分解、AIが生成したコードの不具合の発見と修正、そして本番に出せる水準を満たしているか、とされています。バックエンドとフロントエンドの試行では、CS基礎の面接をAI支援のコーディング面接に置き換えたとも書かれていました。印象的なのは、AIに慣れていない候補者がコーディングそのものより「AIをどう導くか」の判断で苦戦した、という記述です。
別の海外のAIチップ企業が公開している採用方針の記事「Hiring engineers for an AI-native world」も、見ているところはほぼ同じです。問題を理解してからAIに任せているか、生成されたコードを検査しているか、自分で説明・変更・デバッグできるか、エッジケースをテストしているか。そして、プロンプトの型や特定ツールへの習熟は採点しない、最終成果物への責任は候補者にある、とされています。
ここから私が読み取っている評価軸は、次の5つです。
- 任せる前に、問題と要件を自分の言葉で理解しているか
- AIの出力を読み、誤りや危うい箇所に気づけるか
- 実行・テストを早めに回し、エラーを読んで直せるか
- 採用したコードの理由を、口頭で説明できるか
- AIに任せない場面で、自分で手を止めて判断できるか
これは裏を返せば、プロンプトのうまさを競う面接ではない、ということです。AIが書いたコードの責任を自分で持てるかどうかが問われています。
ポイント: AI使用可の面接で落ちる人は、AIが使えない人ではなく、AIの出力を「自分のコード」として説明できない人です。使っていいと言われたことで、かえって説明責任が重くなります。
もう1つ、私が現場で強く感じているのは、面接官側の事情です。AIで誰でも動くコードが出せる以上、面接官は動いたかどうかでは差を測れません。残る差は、どこで手を止めたかという行動の中に出ます。ここは、後半の準備の話に直結します。
相談事例:Tabキーを押した瞬間に評価が決まった
フロントエンドエンジニアの相談者の話をします。事業会社のtoCサービスに在籍する27歳・経験5年の方で、AIの利用を認めると案内に書かれていた企業の技術面接を受けました。ここでは細部を匿名化し、数字も設定例として書きます。
課題は、検索ボックスに入力した文字列で候補を絞り込む画面の実装でした。画面共有をしてエディタを開くと、AI補完が最初の数行で関数全体の形を出してきたそうです。その方は内容を読まずにTabキーを押し、30秒ほどで動く画面ができあがりました。
ところが面接官から「入力が速いとき、前のリクエストの結果が後から返ってきたらどうなりますか」と聞かれ、答えに詰まりました。AIの出したコードには、古いリクエストの結果を捨てる処理がありませんでした。本人はそれがコードに入っていないことすら把握しておらず、「AIが出したので、たぶん大丈夫だと思います」と答えたところで、面接官の質問が基礎的な確認に切り替わったと聞いています。
結果は見送りでした。面接後のフィードバックは、実装の速さは十分で、AIの出力に自分の判断が載っているかが見えなかった、という趣旨でした。私に相談に来たときの本人の言葉が、いまも残っています。「Tabを押した瞬間が、一番速くて、一番まずかったんですね」。
この後、本人は準備の仕方を変えました。次の応募先は少し離れた別業態の会社でしたが、面接で最初の数分、AIに任せる前に自分で要件を口に出し、出力はすべて読んでから採用するようにしたところ、二次面接まで進みました。ただ、結果はこの一例だけです。これで通る、と言える話ではありません。それでも「何を変えたか」は、他の人にも使えるはずです。
AIの出力を検証して説明するための準備の手順
準備は、AIを避ける練習ではなく、出力を読む順番を決めておく練習です。いざ画面共有で本番になると、人は緊張して普段の手順を飛ばします。順番を先に体に入れておくだけで、手を止められる回数が増えます。
任せる前に、要件を自分の言葉で言い直す
AIに指示を出す前の30秒が、評価に効きます。課題文を読んだら、すぐに入力せず、まず声に出して次の3つを確認します。
- 入力と出力は何か(型・件数・空のとき)
- 曖昧な箇所はどこか(面接官に質問できるもの)
- 最初に作るのは最小のどこまでか
この確認の発話そのものが、「曖昧な要件を分解できる人」の証拠になります。先ほどの2社が揃って重視している観点でもあります。
出力は「読む→動かす→壊す」の順で扱う
AIの出力を受け取ったら、採用の前に3段階を通します。読む(何をしているかを自分の言葉で言える)、動かす(早めに実行してエラーを読む)、壊す(境界の値や異常な入力で試す)の順です。
特に「壊す」を飛ばす人が多いです。動いた時点で安心して次へ進んでしまうのですが、面接官が見たいのはまさにその先です。空配列、巨大な入力、同時に来るリクエスト、ネットワーク失敗など、自分が決めた1〜2個の異常系を必ず試す、と決めておくだけで違います。
採用した理由を一言で言えるようにする
もう1つの準備は、採用・不採用の理由を短く言う習慣です。「ここはAIの案をそのまま使います。理由は〜です」「この部分はAIの案だと〜が心配なので、自分で書き換えます」。この二つのどちらかを、コードを確定させるたびに口にします。
私は、ここが一番差のつく部分だと見ています。AIの出力を黙って受け入れた人と、理由をつけて受け入れた人は、画面上の結果がまったく同じでも、面接官には別の人に見えます。採用した理由を言えることが、AIを使った面接での実力の見せ方です。
職種別に整理する、検証の観点
AIの出力を読むといっても、何を見るかは職種で違います。バックエンドとフロントエンドで、私が相談者に勧めている観点を整理します。表の観点を全部覚えようとするより、自分の過去の障害やレビュー指摘から「自分が見落としがちな型」を3つ選んでおくほうが、本番で使えます。
| 観点 | バックエンド | フロントエンド |
|---|---|---|
| 境界・異常系 | 空データ、重複リクエスト、タイムアウト時の挙動 | 空状態、読み込み失敗、遅いネットワーク |
| データ・状態 | トランザクション境界、冪等性、N+1クエリ | 状態の持ち方、再レンダリング、古い非同期結果の扱い |
| 性能 | インデックスの前提、ページングの方式 | 不要な再描画、巨大リストの描画、バンドルサイズ |
| 安全性 | 入力検証、権限チェック、SQLの組み立て方 | XSS、入力値のサニタイズ、機密値の露出 |
| テスト | 正常系だけで終わっていないか、モックの置き方 | 何をテストする価値があるか、見た目より挙動 |
バックエンドは、AIが書くコードがきれいで一見正しいぶん、一覧取得がページングなしで全件返している、更新処理にトランザクションがない、同じリクエストが2回来たら二重登録になるといった抜けが残りがちです。AIは平均的な実装は得意でも、その会社のデータ量や障害の傾向までは知りません。
フロントエンドは、先ほどの相談者のように、非同期の結果が順不同で返る問題、useEffectの後始末忘れ、状態の置き場所の間違いが典型です。見た目が合っていることと、挙動が正しいことは別です。状態管理や性能の観点はフロントエンド面接でReactの状態管理・性能を問われる場面でも整理していますので、AIなしの面接への備えと兼ねて見てください。バックエンド側のDB・設計の見られ方はバックエンドエンジニアの面接でDBとシステム設計のどちらを見られるかが参考になります。
口頭で説明する練習は、画面共有で独り言を録るところから
準備で一番足りていないのが、声に出す練習です。コードを読む力があっても、画面共有で面接官に聞かせる形に変換できていない人は多いです。
私が勧めているのは、自分のPCで簡単な課題を1つ選び、画面を録画しながらAIを使って解く練習です。ポイントは、黙って打たないこと。「いまAIに〜を頼みます」「出てきたこの部分は、〜なので採用します」「ここは自分で直します」と、実況しながら進めます。
終わったら録画を見返して、次の3点を確認してください。
- 出力を読まずに採用した瞬間はなかったか
- 異常系を試す前に「できました」と言っていないか
- 理由を聞かれたら即答できない箇所はなかったか
最初の1回は、ほぼ確実に恥ずかしい録画になります。ただ、それは本番で面接官に見られるはずだったものが、先に自分の目で確認できたということです。持ち帰り課題と並行して準備しているなら、エンジニアの持ち帰り課題で時間をかけすぎない進め方も一緒に読んでおくと、時間配分の感覚をつかみやすくなります。
AI不使用の面接も続いている以上、ライブコーディングで基礎が出てこないのは別の問題です。つまずきやすい型はコーディングテストで落ちる人の典型パターンで整理しています。AI使用可になっても、アルゴリズムや言語の基礎が不要になるわけではありません。AIの出力の誤りに気づけるのは、基礎が頭に入っている人だからです。
応募先にAI利用方針を確認する聞き方
ここからは、現役エージェントとして一番具体的にお伝えできる部分です。AI使用可かどうかが選考案内に書かれていない場合、面接前に聞いてかまいません。聞いて印象が悪くなることは、私の経験ではまずありません。むしろ、聞かずに本番で迷うほうが損です。
聞き方は、窓口によって使い分けます。
- エージェント経由の場合: 私たち担当者に「面接でAIツールを使えるか、使える場合はどのツールか」を企業へ確認するよう依頼する。企業側も人事経由で整理した回答を返しやすい
- カジュアル面談がある場合: 面談の最後に「技術面接の形式で、AIツールの利用は想定されていますか」と質問する
- 直接応募で面談がない場合: 面接日程の調整メールに、確認事項として1行添える
メールで添えるなら、たとえば次のような書き方です。
技術面接の形式について確認させてください。コーディングの場面で、AIアシスタント(CopilotやCursorなど)の利用は可能でしょうか。可能な場合、普段使っている環境を持ち込んでよいか、画面共有の範囲を含めて教えていただけると助かります。
確認したいのは、おおよそ次の4点です。
- 使ってよいか、使ってはいけないか
- 使ってよい場合、ツールの指定はあるか(自分の環境か、用意された環境か)
- 画面共有で何を見せるか(エディタ全体か、AIのチャット画面も含むか)
- 使ったことを、評価の対象として見られるのか
「ずるをするつもりではない」という前置きは不要です。聞く目的は、ルールの中で最大限の力を出すためだと、淡々と伝えれば足ります。
注意してほしいのは、禁止されていた場合の線引きです。AI不使用が既定で、許可するときだけ選考ごとに明示する、という運用を公開している企業もあります(たとえばAI企業の候補者向けガイドでは、応募書類の推敲や面接準備にAIを使うことは勧める一方、持ち帰り課題とライブ面接は別途指示がない限りAIを使わない前提と明記されています)。「許可の記載がなければ使わない」を既定にしておくのが安全です。禁止されている場で隠れて使うのは、評価以前に信頼の問題になります。
頼りすぎて落ちる人と、使いこなして伸びる人の違い
私が見てきた範囲で、AI使用可の面接で見送りになる人には、はっきりした型があります。
1つ目は、丸投げ型です。課題文をそのままAIに貼り、出力をそのまま提出する。早く終わるのですが、面接官が少し深掘りすると何も出てきません。2つ目は、不信型です。AIの出力を全部自分で書き直そうとして時間切れになる。AIの出力を読んで残すところと直すところを判断するのが評価点なので、全部書き直すのも違います。
3つ目は、案外多いのですが沈黙型です。AIの返答を待っている間、画面を見たまま黙ってしまう。面接官から見ると、考えているのか、固まっているのか分かりません。待ち時間にも「いまこの出力の〜を確認しています」と話し続けるだけで、印象は大きく変わります。
逆に評価が伸びる人は、AIに任せる部分と自分で決める部分を、最初に口に出して切り分けています。定型の処理や下書きはAIに任せ、設計の分かれ目と異常系は自分で決める。この切り分けこそ、面接官が見たい「手を止める場所」です。ここを自分の言葉で語れるかが、他の候補者との差になります。
なお、ここで挙げた型は私の現場感覚で、統計ではありません。ただ、公開されている企業側の評価観点とも重なっているので、準備の方向としては外していないと考えています。
よくある質問
AI使用可でも、アルゴリズムや言語の基礎は見られますか。 見られると考えておくのが安全です。AIの出力の誤りに気づくには、基礎の理解が前提になるからです。基礎を問う面接とAI使用可の面接を併用する企業もあるため、片方に偏った準備は避けてください。
どのAIツールを使えばよいですか。 応募先が指定しているならそれに従います。指定がなければ、普段使い慣れたものを持ち込めるか事前に確認します。公開されている企業側の説明でも、特定ツールへの習熟やプロンプトの型を採点するとは書かれていません。ツールの選び方より、出力を読む順番のほうが評価に効きます。
AI使用可かどうかが分からないまま面接が始まったら、どうすればよいですか。 最初の数分で、面接官に「AIツールを使ってもよいでしょうか」と聞いてください。禁止されていた場合は、そのまま自分で解く方針に切り替えます。聞いた時点で評価が下がったという話は、私の知る限りありません。
使っているところを見せるのが不安です。AIに頼る人と見られませんか。 AIを使うことそのものが問題になる場面では、使えるとは案内されません。使っていいと案内された場でAIを使わないほうが、かえって「普段の働き方を見せない人」になりかねません。見られているのは頼るか頼らないかではなく、頼ったあとの判断です。
まとめ
AI使用可のコーディング面接は、海外では公式に始める企業が出てきた一方、国内は応募先ごとに確認が要る段階です。だからこそ、準備は「AIを使う場合」と「使えない場合」の両方に効く形にしておくのが現実的です。
評価の中心は、解けたかどうかではなく、AIの出力を読み、動かし、壊して、採用した理由を自分の言葉で説明できたかにあります。要件を声に出して言い直す、出力を読む順番を決める、採用の理由を一言ずつ口にする。そして面接前に、AIの利用方針を窓口に確認する。この4つが、今日から始められる準備です。
この記事で一番伝えたかったのは、AIが使えるようになった面接で評価を分けるのは、AIを使う腕ではなく、AIが出した答えに対してどこで手を止め、自分で判断したかを示せるかどうかだということです。応募先のAIの扱いが分からない、準備の見せ方に自信がない、という方は、選考案内の読み方も含めて、お気軽にご相談ください。




