候補者が持ってきた求人のURLを開き、掲載元の会社名と就業先の会社名を見比べて、そのまま黙り込んでしまう。SESから自社開発への転職を支援していると、この場面にときどき出会います。求人票の見出しには確かに「自社開発」と書いてあるのに、読み進めると勤務地は「プロジェクト先」になっているからです。
私はIT・Web業界を中心に800名以上の転職支援に携わってきましたが、SESを抜け出したい人が最後に引っかかるのは、条件の悪い会社よりも「自社開発」という言葉の中身が確認されないまま話が進んでしまう会社のほうだと感じています。今回は、求人票、公式サイト、面接の順に何を見れば白で、何が書かれていなければグレーなのかを、実際の相談例を交えてお伝えします。
今回は、次の内容に沿ってご紹介します。
- 「自社開発」と書かれていても実態が受託・客先常駐になる、表記の食い違いが起きる構造
- 求人票で見る4つの箇所と、白とグレーを分ける読み方
- 公式サイトで「自社製品の実在」を確かめる手順
- 面接・カジュアル面談で聞く質問の順番と、回答の読み方
- SESから自社開発を目指す人が最後に引っかかりやすい罠
目次
- 自社開発と書いてあるのに客先常駐あり、表記が食い違う理由
- 事例:内定承諾の前日に、求人の掲載元が気になったEさん
- 手順1:求人票で見る4つの箇所と、白・グレーの分け方
- 求人票に常駐の記載がなくても、それだけで問題とは限らない
- 手順2:公式サイトで「自社製品の実在」を裏取りする
- 手順3:面接・カジュアル面談で聞く質問の順番
- 回答の読み方:白・グレー・黒
- SESから自社開発を目指す人が、最後に引っかかりやすい罠
- 罠1:自社プロダクトの部署があることと、自分がそこに入れることは別
- 罠2:「自社開発案件」という言い方
- 罠3:「最初だけ客先、慣れたら自社へ」
- 罠4:エージェントや求人サイトの説明を、そのまま信じる
- 罠5:早く決めたい気持ちが、確認を省かせる
- 自社オフィスで働く受託会社と、自社プロダクトの会社は別物
- 食い違いを感じたら、入社前に文面で確認する
- よくある質問
- まとめ:「自社開発」の言葉でなく、直近1年の実績で判断する
自社開発と書いてあるのに客先常駐あり、表記が食い違う理由
最初に断っておくと、求人票に「自社開発」と書いてある会社がすべて怪しいわけではありません。本当に自社プロダクトだけを作っている会社は多く、そういう会社の求人票は後述する確認でほとんど白になります。問題になるのは、「自社開発」という言葉が指す範囲が、会社によってかなり違うことです。
私が現場で見てきた「自社開発」の使われ方は、大きく3つに分かれます。
- 自社で企画・運営するプロダクトを開発している(本来の意味での自社開発)
- 自社オフィスに出社して、クライアントから請けた案件を開発している(「自社内開発」の意味で使っている)
- 自社プロダクトの部署もあるが、人数の大半は客先常駐のSES・受託で稼働している
2つ目は、悪意がなくても起きます。会社側が「自社の中で開発している」というつもりで「自社開発」と書き、読む側は「自社のプロダクトを作る」と受け取る。この読み違いは、求人票を読むかぎり検知できません。3つ目は、一番厄介です。嘘ではないが、応募者が想像する働き方とは別の働き方が、人数の大半を占めています。
SES・受託を営む会社が自社開発を前面に出す理由も、理解はできます。エンジニアの採用市場では「自社開発」のほうが応募が集まるため、自社プロダクトを立ち上げ始めた会社や、新規事業として小さなチームを持った会社が、会社全体を「自社開発企業」のように見せてしまうわけです。会社が自社開発を名乗っていることと、あなたが入る配属先が自社開発であることは、別の話です。
なお、SESと自社開発の年収差や「自社開発」を名乗る会社の大まかなチェックポイントは、SESと自社開発の年収差を扱った記事で触れています。この記事では、そこから一歩踏み込んで、求人票・公式サイト・面接の三段階で「どこまで確認すれば納得して決められるか」を整理します。
事例:内定承諾の前日に、求人の掲載元が気になったEさん
ここで、実際にあった例を紹介します。以下は特定されないよう、数字や設定を調整しています。
Eさんは27歳、経験4年のC#(.NET)エンジニアで、独立系SESの会社から製造業向けの業務アプリ開発に客先常駐していました。自社プロダクトを持つ会社で、仕様から設計まで関わりたいというのが転職の動機でした。応募したのは、スカウト経由で見つけた「自社開発・自社サービス運営」を掲げる会社で、面接は2回、内定が出たところで私に相談が来ました。
引っかかったのは、内定通知書の会社名と、スカウトが届いた求人ページの掲載元の名前が、一文字違っていたことでした。聞いてみると、求人を出していたのはグループ内の別法人で、内定を出したのは事業会社のほうだったそうです。そこで二人で求人票を読み直しました。勤務地は「東京都(プロジェクトにより異なる)」、業務内容は「自社サービスおよび受託案件の開発」。「および」の一語を、Eさんは面接のときには読み飛ばしていました。
私は、その場で会社の公式サイトをEさんと一緒に見ました。サービス紹介のページには自社製品の記載が1つあるだけで、導入事例の大半はクライアント名が並ぶ受託の実績でした。面接では「うちは自社開発です」としか聞いておらず、常駐の有無は一度も質問していなかったことが分かりました。
Eさんは翌日、人事に「直近1年間で、開発メンバーのうち自社サービスに入っている人数と、客先で稼働している人数を教えてほしい」とメールで質問しました。回答は、開発メンバー約40名のうち自社サービスは6名、残りは客先で稼働、というものでした。配属先は入社後に決まり、希望は出せるが約束はできないとも書かれていました。Eさんは承諾を保留し、その会社を辞退しました。
結果として、Eさんは自社プロダクトの運営比率がもともと高い別の会社から、その後に内定を得ています。ただし、これは「質問したから辞退して正解だった」という話ではありません。あの6名の中に入れるなら承諾した、という選択も十分にありえました。大切なのは、承諾の前に「自社サービスに入れる確率」を、自分で数字にして判断できる状態にしたことです。
手順1:求人票で見る4つの箇所と、白・グレーの分け方
ここからは、求人票→公式サイト→面接の順に確認する手順です。最初は求人票ですが、求人票で白黒を決めようとする必要はありません。求人票で見るのは、「この先に時間をかけて調べる価値があるか」と「聞くべき質問が何か」の2点です。
私が最初に見る箇所は次の4つです。それぞれ、何が書いてあれば白寄りで、何が書いていなければグレーかを表にまとめました。なお、ここでいう「白」は、確認を省いてよいという意味ではなく、次の段階へ進んでよいという意味です。
| 見る箇所 | 白寄りの書き方 | グレーの書き方 |
|---|---|---|
| 掲載元と就業先 | 掲載会社と、就業先として書かれた会社が同一 | 掲載元が別法人・別名義で、就業先の会社名が書かれていない |
| 勤務地 | 自社の住所のみ(例:東京都〇〇区、本社) | 「プロジェクト先」「顧客先」「都内各所」「案件による」 |
| 自社製品・サービス名 | 製品名とそのURLが書かれている | 「自社サービス」「自社開発」とだけで固有名がない |
| 常駐・帰社日の書き方 | 常駐の有無が明記されている(なし、または割合つきで「あり」) | 帰社日、帰社日手当、「配属先の規定に準ずる」勤務時間の記載がある |
この中で、私が一番の分かれ目だと見ているのは3つ目の自社製品名です。本当に自社プロダクトを持つ会社は、その名前を求人票に出したがるからです。自社の看板ですから、採用上も一番の強みになります。製品名が書かれていない「自社サービス」「自社開発」という言葉は、確かめる価値のある空欄だと捉えています。
帰社日の記載は、少しだけ補足しておきます。月に1回など、会社に集まる日として設けられていることが多く、そもそも普段は会社にいない働き方を前提にしている表記です。自社オフィスで働く自社開発の会社であれば、帰社日という概念自体が出てきません。
ただし、グレーが1つでもあれば不合格にする、という使い方はしないでください。勤務地に「案件による」と書いてある会社でも、実際には全員が自社オフィスに出社している例はあります。グレーが2つ以上重なったら次の段階で重点的に確認する、くらいの感覚が実態に合っています。
求人票に常駐の記載がなくても、それだけで問題とは限らない
「常駐があるのに書いていないのは、虚偽の表示ではないのか」と思う方は多いはずです。厚生労働省は、職業安定法に基づく労働者の募集広告の表示について周知しており、職業安定法第5条の4で、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示が禁止されていると案内しています(出典:厚生労働省「職業安定法に基づく周知|労働者の募集広告の表示について」)。
ただし、同じ資料の中には、募集広告に示す就業場所は雇入れ直後の場所でよいという趣旨の例も載っています。つまり、将来の配属で客先常駐になりうることが書かれていなくても、それだけで直ちに問題になるとは限らない、ということです。個別の求人が適法かどうかは、この記事では判断しません。私が扱うのは、読む側がどう自衛するかです。
ポイント: 求人票の記載は「法的に問題があるか」ではなく「自分が知りたい情報が書いてあるか」で読みます。書かれていないことは、面接で自分から質問して、回答をメール等の文面で残すのが現実的な対処です。
手順2:公式サイトで「自社製品の実在」を裏取りする
求人票でグレーが重なったら、次は会社の公式サイトを見ます。ここでの目的は、自社製品が実在するかどうかと、会社の実績の中で自社製品がどれくらいの比重を占めるかを、外から見える範囲で測ることです。
見る順番は、私の場合は次のとおりです。
- 製品・サービスのページがあるか、製品名で検索して第三者の言及(利用者の声、レビュー、導入企業のリリース)が出てくるか
- 事業内容の説明で、受託開発・システム開発支援・エンジニア派遣といった言葉が先頭に並んでいないか
- 導入事例や実績のページが、自社製品の事例か、クライアント名の並ぶ受託実績か
- 採用ページや技術ブログに、自社プロダクトの開発チームの話(構成、技術選定、リリースの経緯)が出てくるか
- 社員数と、開発組織の人数感が書かれていて、自社製品に関わる人数が分かるか
一番手軽なのは、製品名で検索することです。本当に運営されているサービスなら、公式サイト以外の場所にも名前が出てきます。利用者の感想、導入した企業のプレスリリース、アプリストアのレビュー。検索して公式サイトしか出てこない場合は、自社製品が存在はしても、事業の中心ではない可能性が高いと、私は見ています。
もう1つ、技術ブログや採用ページの内容も効きます。自社プロダクトを本気で作っている会社は、技術選定の理由や運用の課題を書きたがります。逆に、ブログの内容が「新卒研修の様子」「社内イベントの報告」だけなら、会社としてプロダクト開発が話題の中心にないことを示唆しています。
公式サイトで確認できることには限りがあります。会社が公開していない比率は、外から測れません。だから公式サイトの役割は、「面接で何を聞くか」を絞り込むことです。たとえば、自社製品のページはあるが導入実績が少ない会社なら、「自社製品に何名が関わっていますか」という質問に、より具体的な意味が出てきます。
手順3:面接・カジュアル面談で聞く質問の順番
求人票と公式サイトで確認できなかった部分は、面接で聞きます。ここで一番よく聞かれるのが、「常駐の有無を聞いても、悪い印象になりませんか」という質問です。
私の答えは、聞き方次第で問題ないです。入社後の配属は働き方を大きく左右しますから、確認することは当然です。むしろ、聞かずに入社して「自社開発のつもりだった」と後から言うほうが、会社にとっても不幸です。質問の目的を「疑っている」ではなく「入社後の働き方を具体的に想像したい」に置くと、聞き方が自然に変わります。
質問は、答えやすく、数字が返ってくるものから順に並べます。
面接で聞く質問の順番(例)
- ①「開発メンバーの中で、自社サービスを担当している方と、他社のプロジェクトで稼働している方は、それぞれ何名くらいですか」
- ②「この求人で採用される方は、どちらに配属される想定ですか。配属はいつ、どなたが決めるのでしょうか」
- ③「直近1年で、自社オフィス以外で稼働していた方の割合はどのくらいでしたか」
- ④「入社後に、配属先や就業場所が変わることはありますか。変わる場合の範囲を教えてください」
- ⑤「自社サービスのチームは、直近でメンバーの入れ替えや増員がありましたか」
順番にも理由があります。①は、現在の会社の体制を数字で聞く質問で、相手も答えやすい。②で、あなた自身の配属の話に切り替えます。③は直近の実績で、「今後は自社に寄せていく予定です」という将来の話ではなく、過去1年の事実を聞くための質問です。将来の予定は変わりますが、直近1年の実績は変わりません。
④は、2024年4月から労働条件の明示のルールが変わり、労働契約を結ぶときに、雇入れ直後の就業場所や業務に加えて、就業場所・業務の変更の範囲も明示することが必要になったことを背景にしています(出典:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」)。このページは契約締結時のルールを説明するもので、募集時の求人票に直接適用される話ではありません。ただ、内定から入社までの間に「変更の範囲」を確認しておく根拠としては使えます。内定後に労働条件通知書を確認するときの考え方も、あわせて参考にしてください。
質問するときは、聞いた内容をその場でメモして、面接後にメールで「確認のため」として書き出しておくのも有効です。口頭の回答は、後から「そういう意味ではなかった」と食い違いやすいからです。相手の返信が丁寧なら、それ自体が会社の姿勢の判断材料にもなります。
回答の読み方:白・グレー・黒
質問への回答は、内容そのものよりも、具体的な数字が返ってくるかどうかで読みます。
| 回答の傾向 | 読み方 |
|---|---|
| 自社サービスの人数・直近の常駐人数が数字で返ってくる | 白寄り。数字が自分の希望と合うかを判断する |
| 「ケースバイケースです」「案件によります」で止まる | グレー。「直近1年の実績で教えてください」と一度だけ聞き直す |
| 「配属は入社後に決まります。ご希望は聞きます」で具体的な根拠がない | グレー。希望が通った人の実例を聞く |
| 常駐の有無の質問自体を嫌がる、はぐらかす | 黒寄り。他の面接官や人事に別ルートで確認する |
グレーの回答が返ってきたとき、私は候補者に「もう一度だけ、聞き方を変えて聞いてみましょう」と伝えます。たとえば、直近1年に入社した3名が、それぞれどこに配属されたかを聞く。具体的な人数の話は、制度の説明よりもごまかしにくいからです。
このやり取りは、カジュアル面談の段階から始めるのが理想です。選考が進んでからだと、聞きづらい空気が生まれます。カジュアル面談での質問の使い方はカジュアル面談の評価の実態を扱った記事にまとめています。
SESから自社開発を目指す人が、最後に引っかかりやすい罠
ここまでの手順を踏んでも、実際の相談では次のような場面で判断が揺らぎます。SESから自社開発を目指している人ほど、「ようやく自社開発の内定が出た」という気持ちが強く、確認を省きたくなるからです。
罠1:自社プロダクトの部署があることと、自分がそこに入れることは別
先ほどのEさんの例のとおり、自社プロダクトを持つ会社でも、そこに入れる人数は限られていることがあります。面接で「自社サービスの開発にも携われますよ」と言われたとき、「携われる」の中身を確認してください。メインの担当なのか、兼務なのか、手が空いたときのヘルプなのか。担当範囲が、あなたの転職の目的と合っているかで、同じ言葉の意味が変わります。
罠2:「自社開発案件」という言い方
求人票や面談で「自社開発案件」という言葉が出たら、一度立ち止まって、何を指しているのかを確かめてください。「案件」は、クライアントから請けた仕事を指して使われることが多い言葉です。自社プロダクトの開発なら「プロダクト」「サービス」「機能開発」と呼ぶ会社も少なくありません。
ただ、社内の開発テーマを「案件」と呼ぶ会社もあるので、この言葉だけで受託だと決めつけることはできません。私は「自社開発案件とは、具体的にどの製品の、どんな開発ですか」と聞き返す入口にしています。言葉の癖は、事業の重心を映していることがあるからです。
罠3:「最初だけ客先、慣れたら自社へ」
「最初の半年だけ客先で経験を積んでもらって、その後は自社サービスのチームに移ってもらう」という説明を聞くことがあります。この説明が本当に実現している会社もありますが、その後がいつ来るかは案件の状況と客先の契約次第で決まることが多いです。客先の都合で稼働が延びるのは、SESにいた人なら想像がつくはずです。私は、「その移動を実際にした人は、直近で何名いますか」と聞くようにすすめています。実例が出てこなければ、約束としては弱いままです。
罠4:エージェントや求人サイトの説明を、そのまま信じる
意外に見落とされるのが、求人を紹介する側の情報です。転職エージェントも、すべての会社の配属実態を把握しているわけではありません。私自身も、企業の担当者から聞いた内容と、候補者が面接で聞き出した内容にずれがあった、という経験をしています。紹介されたから大丈夫、と決めつけず、同じ質問を自分でも面接で確認してください。
罠5:早く決めたい気持ちが、確認を省かせる
今の客先常駐から抜け出したい。契約の更新が近い。そういう状況だと、内定が出た時点で気持ちが「承諾」に傾き、確認の質問が後回しになります。SESで契約更新のタイミングに追われた経験があるほど、この傾向は強く出ます。私は、承諾の返事を出す前に、「質問のメールを1通出す」ことを一つのルールにしています。たった1通でも、会社の対応と回答の具体性から、多くのことが分かります。
実際、SESの現場で保守運用を5年続けた方が自社開発へ移るとき、経験の見せ方で苦労する例は多いです。その部分については保守運用5年の方が自社開発へ移る職務経歴書の書き方で詳しく扱っています。ここでは、会社選びの段階の話に絞りました。
自社オフィスで働く受託会社と、自社プロダクトの会社は別物
ここまで「客先常駐があるかどうか」を軸にしてきましたが、もう1つ区別しておきたい線があります。常駐がなくても、受託開発が中心の会社は、自社プロダクトの会社とは別の働き方になるということです。
受託開発の会社では、複数のクライアント案件を並行して、納期と予算の枠の中で進めます。自社プロダクトの会社では、リリース後も継続して改善を続ける時間軸になります。この違いは、仕様を決める立場、技術選定の自由度、運用で見える課題の深さに直結します。受託開発の案件の多様性を面接でどう語るかを扱った記事でも触れましたが、どちらが良い悪いではなく、自分が何を求めているかで選ぶものです。
自社開発に移ってからの環境もまた、会社によって大きく差があります。たとえば、コードレビューの文化がない自社開発企業の例のように、「自社開発」であることと、成長できる環境であることも別の話です。自社開発の看板は、確認の終点ではなく、確認の入口と考えたほうが安全です。
食い違いを感じたら、入社前に文面で確認する
面接の回答と、求人票や公式サイトの内容が食い違っていると感じたとき、まず行うのは、事実の確認を文面で依頼することです。感情的に問い詰めるのではなく、「面接では自社サービスの担当とお聞きしましたが、求人票には受託案件も記載がありました。入社後の配属について、改めて確認させてください」といった形で、人事宛にメールを送ります。
誠実な会社であれば、数日以内に具体的な回答が返ってきます。回答があいまいなままだったり、返信自体が遅れたりする場合は、その態度も判断材料です。内定承諾の期限を延ばしてもらう交渉は、多くの会社が応じてくれます。
それでも食い違いが解消しない場合や、入社前後で説明と明らかに違う条件を示されたときは、公的な相談窓口を使う選択肢もあります。相談先は、お住まいの地域の労働局や総合労働相談コーナーなどがあるので、必要になったときに調べてください。ただし、実際に動くかどうかは、入社前の確認で多くを防げるはずです。まずはその手前で止めることを優先してください。
よくある質問
面接で「常駐はありますか」と聞くと、印象が悪くなりますか。 聞き方次第です。「疑っている」という姿勢で聞くと、確かに空気は硬くなります。「入社後の働き方を具体的に想像したいので」と目的を添えて、開発メンバーの内訳や直近の配属の実績を聞く形にすれば、むしろ入社意欲の高さとして受け取られる場面が多いです。
求人票に常駐の記載がなければ、常駐はないと考えてよいですか。 そうとは言い切れません。厚生労働省の資料には、求人票の就業場所を雇入れ直後の場所のみ示す例があり、将来の配属先まで書かれているとは限らないためです。記載がないことは「ないこと」の証明にならないので、面接で確認してください。
カジュアル面談では何を聞くのが一番効果的ですか。 開発メンバーの内訳と、直近1年の配属の実績です。会社の方針や理想を聞くより、人数と実績のほうが、会社の実態に近い情報が返ってきます。選考が始まる前に聞けるのも、カジュアル面談の利点です。
エージェント経由の求人でも、自分で確認する必要はありますか。 あります。エージェントは企業から聞いた情報をもとに案内しますが、個々の配属の実態までは把握しきれていないことがあります。同じ質問を面接で自分でも聞いて、回答を手元に残しておくと安心です。
まとめ:「自社開発」の言葉でなく、直近1年の実績で判断する
求人票に書かれた「自社開発」の四文字は、その会社が自社プロダクトを持つことの証明にも、あなたがそこに配属されることの約束にもなりません。この記事でお伝えした求人票、公式サイト、面接の三段階は、その言葉の中身を、外から見える材料で一つずつ埋めていく作業です。
求人票では掲載元と就業先、勤務地の書き方、製品名の有無、常駐や帰社日の記載を見る。公式サイトでは、自社製品が第三者の言及を伴って実在するか、実績の中心が何かを見る。面接では、自社サービスに入っている人数と、直近1年の稼働場所の実績を数字で聞く。どれか1つで決めず、3つがそろったときに判断してください。
最初に紹介した年収差の記事でも触れているとおり、転職の判断は年収だけで決めると失敗します。同じように、「自社開発」という言葉だけで決めることも危険です。SESから自社開発を目指すあなたにとって一番大切なのは、肩書きや看板ではなく、直近1年の実績という変えにくい事実を基準に選ぶこと。これが、私がこの記事で一番お伝えしたかったことです。




