「VPoEもCTOも、要は技術のトップですよね。だったら同じ職務経歴書で両方に出しても大丈夫ですよね」——開発部長クラスの方から、こういう質問を受けることがあります。

私はIT・Web業界を中心に800名以上の転職支援に携わっていますが、この2つの求人を同じ書類で受けて、書類は通るのに面接で噛み合わなくなる方を何人も見てきました。求人票の見た目は似ていても、企業が「この人なら任せられる」と判断する材料がまったく違うからです。今回は、VPoE求人の見極め方と、CTOとの評価軸の違い、そして職務経歴書と面接での書き分けを、実際の言い換え例を交えてお伝えします。

今回は、次の内容に沿ってご紹介します。

  • VPoEとCTOで、企業が見ている実績(組織作りか技術戦略か)がどう違うのか
  • 求人票の文言から「組織作り型」「技術戦略型」「実態はEM・CTO兼務」を見分ける読み方
  • 同じ経歴を、VPoE向けとCTO向けで職務経歴書に書き分けるBefore/After
  • 面接での語り分けと、カジュアル面談で求人の実態を確かめる質問
目次
  1. VPoE求人の見極め方は「肩書き」ではなく「求められる実績」から始まる
  2. VPoEとCTOの評価軸の違いを整理する
  3. 年収は媒体でばらつくので「幅」で見る
  4. 求人票の文言から「組織作り型」か「技術戦略型」かを見分ける
  5. 「VPoE」なのに実態がEMの求人
  6. 「CTOがいない会社のVPoE」は兼務の可能性を疑う
  7. 同じ経歴で結果が分かれた、Nさんの2社応募
  8. 職務経歴書をVPoE向け・CTO向けに書き分けるBefore/After
  9. Before:どちらにも出せる書き方
  10. After(VPoE向け):組織作りの実績を前面に
  11. After(CTO向け):技術戦略の実績を前面に
  12. 面接での語り分け:EM経験をどちらの言葉で話すか
  13. VPoE面接:組織の課題設定と打ち手として語る
  14. CTO面接:技術判断の根拠と事業への影響として語る
  15. EMからの転身は「マネージャーのマネージャー」経験が効く
  16. カジュアル面談で求人の実態を見抜く質問
  17. よくある質問
  18. まとめ

VPoE求人の見極め方は「肩書き」ではなく「求められる実績」から始まる

まず役割の整理です。dodaのエンジニア向けガイドでは、CTOは基本的に1人で技術戦略の決定権を持つ役職、VPoEは部長クラス相当で、組織の規模によっては複数配置されることもある役職として説明されています(参考:doda「VPoEとは?役割や求められるスキル、CTOや周辺役職との違い」)。

VPoEの主な責務は、採用・育成・評価・予算といった組織づくりです。CTOは技術選定やアーキテクチャの最終判断、経営への技術面からの提言を担います。ここまでは、検索すればどの解説記事にも載っている話です。

問題はその先です。私が現場で見ていて実感するのは、求人票の肩書きが正確に役割を表しているとは限らないという点です。VPoEと書いてあっても実態は現場の進行管理まで含むEMの延長だったり、CTOと書いてあっても採用も評価制度も丸ごと1人で抱える創業期の何でも屋だったりします。

だから見極めの起点は、肩書きではなく「その企業が何の実績を評価しようとしているか」に置きます。これが決まれば、職務経歴書に何を書くか、面接で何を語るかは自然に決まってきます。

VPoEとCTOの評価軸の違いを整理する

評価軸を一枚にまとめると、次のようになります。

観点VPoE求人で見られやすい実績CTO求人で見られやすい実績
中心テーマ組織をスケールさせる仕組み技術で事業の勝ち筋を作る判断
採用採用人数、採用チャネル設計、内定承諾率技術面接の設計、技術ブランディング
評価・育成評価制度の設計と運用、マネージャー育成技術的なグレード基準、技術方針の浸透
意思決定予算・人員配置・チームのミッション設定技術選定、アーキテクチャ、技術負債の返済判断
対外的な顔採用広報での組織の見せ方技術発信、事業パートナーへの技術面の説明
経営との関係事業計画に合わせた人員計画事業戦略に対する技術的な選択肢の提示

同じ「意思決定」でも、VPoEは人と予算の意思決定、CTOは技術の意思決定と、対象が違います。この違いを頭に置かずに書類を書くと、どちらの求人に出してもぼんやりした印象になります。

年収は媒体でばらつくので「幅」で見る

年収の目安も触れておきます。リラシクの比較記事ではシリーズA以降のスタートアップを想定して、CTOが1,000万〜2,500万円、VPoEが800万〜1,500万円とされています(参考:リラシク「CTO・VPoE・VPoT・VPoPの違い」)。

一方、テクニケーションシードの解説記事ではVPoEが1,000万〜3,000万円以上、CTOが1,500万〜2,500万円程度と、かなり違う数字が出ています(参考:テクニケーションシード「VPoEとCTOの違い」)。媒体によって前提の企業規模や調査の切り方が違うため、数字そのものより幅の広さを見るべきです。

私の実感でも、この2職種の年収は肩書きよりも、企業の資金調達フェーズと、ストックオプションを含む報酬設計で大きく動きます。求人票のレンジは、あくまで入口の目安として扱ってください。

求人票の文言から「組織作り型」か「技術戦略型」かを見分ける

評価軸の違いは、求人票の言葉の偏りにそのまま出ます。私は求人を見るとき、業務内容の欄に並んだ動詞と名詞を、次のどちらに寄っているかで数えます。

組織作り型(VPoE寄り)の文言

  • エンジニア採用の計画立案、母集団形成、面接官のトレーニング
  • 評価制度・等級制度の設計と運用、マネージャーの育成
  • 開発組織の予算管理、チーム編成、オンボーディングの整備
  • エンジニアの定着率・エンゲージメントの改善

技術戦略型(CTO寄り)の文言

  • 技術選定、アーキテクチャの意思決定、技術負債の解消方針
  • プロダクトロードマップへの技術面での提案
  • 技術面での対外発信(登壇、テックブログ、OSS)
  • セキュリティ・可用性・コストの経営への報告

どちらの列にも一定数の言葉が並ぶ求人は珍しくありません。その場合は、必須要件に置かれているのはどちらかを見ます。歓迎要件に置かれている側は「できれば」の扱いで、選考での比重が軽いことが多いからです。

「VPoE」なのに実態がEMの求人

求人票のあちこちに「チームのタスク管理」「スプリントの進行」「1on1の実施」が並び、採用・評価制度・予算の言葉がほとんど出てこないVPoE求人は、実態がEM(エンジニアリングマネージャー)に近いことがよくあります。

これ自体が悪いわけではありません。ただし、その場合は年収も裁量もEMの水準で提示されるのが自然で、「VPoE」の肩書きだけを見て役員クラスの待遇を期待すると、オファー面談で食い違います。肩書きの実態を求人票で見分ける考え方は、テックリード求人の年収レンジと意思決定権の見分け方でも書いたので、そちらも参考になります。

「CTOがいない会社のVPoE」は兼務の可能性を疑う

もう1つ注意したいのが、CTO不在の会社のVPoE求人です。技術戦略の判断と組織づくりの両方を、1人で担うことを前提に書かれている場合があります。

この型は、経営陣からすれば「技術の責任者が欲しい」という要望の別の言い方であることが多く、VPoEと書きながら選考ではアーキテクチャの意思決定を厳しく問われます。求人票に技術選定や技術負債の言葉が必須要件として混ざっているのに肩書きがVPoE、という組み合わせは、その典型的なサインです。

同じ経歴で結果が分かれた、Nさんの2社応募

ここで、実際にあった例を紹介します。

Nさんは37歳・経験13年で、受託開発会社で14名の開発チームを率いていた方です。自社開発のスタートアップへの転職を考えていて、VPoE求人とCTO求人の両方が気になると相談に来ました。

書類はどちらにも同じものを出していて、その中身は「技術選定と設計レビューを主導」「チーム14名のマネジメント」が半々に書かれたものでした。結果は、VPoE求人は書類通過、CTO求人は書類落ちです。

VPoE求人の一次面接で、企業側から返ってきたフィードバックの一文が、今でも記憶に残っています。「技術判断の根拠はよく分かったが、組織課題をどう見つけてどう動いたかの話が聞けなかった」。Nさんは技術の話をすれば評価されると考えて、面接のほとんどを技術選定の話に使っていたのです。

同じ経歴でも、求人が求める軸で語らなければ評価されない。これがNさんの2社応募で見えた一番大きな学びでした。私からは、Nさんの経歴を実績の性質で仕分けることを提案しました。

Nさんの実績を洗い出してみると、技術戦略の側には「小規模なリプレースを主導した」程度の話しかなく、CTOとして技術の方向性を経営に説明した経験は薄いことが分かりました。一方、組織の側には、採用の面接設計の見直しと、評価面談のフォーマット整備という、はっきりした実績がありました。

結局、Nさんは自分の強みが組織側にあると判断して、CTO求人は見送りました。VPoE求人に絞って職務経歴書と面接の語り方を作り直し、別のスタートアップの選考に進んで内定を得ています。CTOを目指すこと自体を否定したわけではなく、今の実績なら勝負できる求人を選んだ、ということです。

職務経歴書をVPoE向け・CTO向けに書き分けるBefore/After

Nさんの例を一般化して、書き分けの型を示します。ポイントは、経歴の事実は変えず、どの事実を先頭に置き、何を成果の指標にするかを変えることです。

Before:どちらにも出せる書き方

Nさんが最初に出していた書類は、次のような書き方でした。

  • 受託開発チーム14名のマネジメントを担当
  • 技術選定・設計レビューを主導し、品質向上に貢献
  • メンバーの育成・採用にも関与

「どちらにも出せる」ということは、「どちらの軸でも評価しづらい」ということです。人数と役割は書かれていますが、何を変えたのか、その結果どうなったのかが読み取れません。

After(VPoE向け):組織作りの実績を前面に

VPoE求人に出す場合は、同じ経歴を組織の言葉で並べ替えます。

  • 14名の開発組織で、採用の面接設計を見直し、1年で6名を採用。内定承諾率を改善
  • 評価面談のフォーマットと評価基準を整備し、半期評価の運用を新設
  • チームリーダー3名にレビュー・1on1の型を伝え、マネージャー層の育成を実施
  • 離職が続いていたチームの原因を面談で洗い出し、配置とオンボーディングを見直し

ここでは採用人数、評価制度、育成、定着という、VPoE求人が挙げる4つの軸に対応する事実を先頭に並べています。技術選定は、末尾に「技術面の意思決定は各チームのリーダーに委任し、私は基準づくりを担当」のように、組織の話として位置づけ直します。

After(CTO向け):技術戦略の実績を前面に

CTO求人に出す場合は、技術判断の側から並べ替えます。

  • 老朽化した基幹システムのリプレースを提案し、技術選定の比較検討を行って経営会議で承認を得た
  • 技術負債の棚卸しを行い、優先度と返済計画を事業計画と合わせて提示
  • アーキテクチャの意思決定の記録を残し、レビュー体制を整備
  • 技術面の対外発信として、社外の勉強会で登壇

CTO向けでは、判断の根拠と事業へのつなぎ方を書きます。「何を選んだか」だけでなく、「なぜそれを選び、事業にどう効いたか」までが読まれるためです。この側の実績が書けない場合は、CTO求人はまだ早いというサインでもあります。

ポイント: 書き分けのコツは、実績を足すことではなく、成果の指標を入れ替えることです。VPoE向けなら人数・定着・制度の運用実績、CTO向けなら技術判断の根拠と事業への影響を、それぞれ数字や結果で書きます。

面接での語り分け:EM経験をどちらの言葉で話すか

書類が通っても、面接で語る軸がずれると、Nさんのように噛み合わなくなります。同じEM経験でも、VPoE向けとCTO向けで語り方を変えます。

VPoE面接:組織の課題設定と打ち手として語る

VPoE面接では、「何が課題で、なぜそう判断し、どう動いて、どうなったか」を、人と組織の言葉で語ります。たとえば、離職が続いたチームの話であれば、次のような流れです。

  • 課題:半年で3名が辞めたチームで、原因が仕様の複雑さではなく評価の不透明さだと分かった
  • 打ち手:評価基準の言語化、1on1の頻度見直し、リーダー層への伝え方の共有
  • 結果:次の半期は離職ゼロ。ただし基準の運用に手間がかかった点は今も課題

結果の部分に「まだ残っている課題」を添えたのは意図的です。面接官は、成功談だけを話す候補者よりも、自分の施策の限界を語れる候補者を信頼する傾向があると、私は現場で感じています。

CTO面接:技術判断の根拠と事業への影響として語る

同じチームの話でも、CTO面接では軸が変わります。離職の原因が技術負債による疲弊にあったのなら、なぜその技術負債を返済対象にしたのか、事業の優先順位とどう折り合いをつけたのか、という判断の根拠を話します。

CTO面接では、経営陣が技術的な選択肢を理解できるように説明できるかどうかも見られます。専門用語を使わずに、「この選択をしなかった場合に起きること」を事業側の言葉で話せるかが、CTOとしての評価を分けます。CTOが面接官として出てくる場合の見られ方は、スタートアップのCTOによる一次面接の見送り例にまとめています。

EMからの転身は「マネージャーのマネージャー」経験が効く

EMからVPoEを目指す場合は、自分のチームを見るだけでなく、複数のマネージャーを束ねた経験(EM of EMs)が評価されやすい、というのが私の実感です。VPoE求人の面接では「チームリーダーやマネージャー自身をどう育てたか」を掘り下げられることが多くあります。

もしその経験が薄いなら、リーダー層に評価や1on1のやり方を伝えた場面など、組織の構造に手を入れた実績から先に語るのが現実的です。マネジメント経験を実装力の言葉に翻訳する逆向きの話は、EMからIC復帰を目指す場合の面接の考え方で書いています。

カジュアル面談で求人の実態を見抜く質問

書類と面接で語り分けても、求人の実態を取り違えていれば、入社後にずれが出ます。応募前のカジュアル面談で、私は次の質問を勧めています。

  • 現在、技術の最終判断をしているのは誰で、この役職はどこまで引き継ぐ想定ですか
  • 入社後90日で期待している成果を、具体的に教えてください
  • 採用予算と人員計画は、この役職が決めるのか、経営が決めて共有されるのか
  • 評価制度は現時点で存在しますか。ない場合、設計は誰の担当ですか
  • 直属の上司は誰で、CTOまたは同格の役職は社内にいますか

1問目と5問目は、技術戦略の責任がどこにあるかを確かめる質問です。CTOが別にいるのか、いないのか、その人との分担はどうなっているのかで、求人の性格が変わります。

3問目と4問目は、組織づくりの裁量を確かめる質問です。予算も評価制度も経営が決めて、VPoEは運用だけを担う構造であれば、実態は組織運営の実務担当に近くなります。

どの答えが正解というわけではありません。大事なのは、自分の実績が活きる型かどうかを、応募前に確かめることです。ここで答えが曖昧な会社は、役職の定義そのものがまだ固まっていないと見ておくのが安全です。

よくある質問

VPoEとCTOの両方に同じ書類で応募してもいいですか。 避けたほうがよいと考えています。求人票が求める実績の軸が違うので、同じ書類だと両方で評価が弱くなります。事実は変えずに、先頭に置く実績と成果の指標だけを入れ替える形で、2種類作るのが現実的です。

EMの経験しかない場合、VPoEに応募できますか。 応募は可能です。ただし、選考では複数のマネージャーやリーダーを束ねた経験、あるいは評価制度や採用の仕組みに手を入れた経験を問われることが多いです。チーム内の進行管理だけの実績にとどまるなら、組織の仕組みに触れた場面を先に整理してから応募したほうが通りやすくなります。

VPoE求人は数が少ないと聞きますが、探し方はありますか。 求人サイトの職種名だけで検索すると漏れやすいです。「開発組織の責任者」「エンジニアリング組織の責任者」「開発部長」といった表現で出ている求人が、実態はVPoEに近いことがあります。エージェントを通すと、公開されていない役員クラスの求人が出てくることもあります。

CTOがいる会社のVPoEと、CTOがいない会社のVPoEでは何が違いますか。 CTOがいる会社では、技術戦略はCTO、組織はVPoEという分担が想定されやすく、採用・評価・育成の実績が中心に見られます。CTOがいない会社では、技術判断も含めて期待されることがあるので、応募前に分担を確認しておくのが安全です。

まとめ

VPoEとCTOは、どちらも技術の意思決定者に見えますが、企業が実績として評価する軸が違います。VPoEでは採用・評価・育成・予算といった組織づくりの実績、CTOでは技術選定・アーキテクチャ・技術負債と事業のつなぎ方が問われます。

求人票では、業務内容の欄の言葉が組織寄りか技術寄りかを見て、必須要件に置かれているほうを重く読みます。VPoEと書いてあっても実態がEMだったり、CTO不在で技術戦略を丸ごと期待されていたりするので、肩書きだけで判断しないことが前提です。

職務経歴書は、経歴の事実を変えずに、先頭に置く実績と成果の指標を求人の軸に合わせて入れ替えます。面接では、同じ経験を「組織課題と打ち手」で語るのか「技術判断の根拠」で語るのかを、求人ごとに決めておきます。

この記事で一番伝えたかったのは、VPoEかCTOかを選ぶ前に、自分の実績がどちらの軸で語れるかを見極めることです。Nさんのように、CTO求人を見送ってVPoE求人に絞る判断も、実績に基づいた前向きな選択です。求人の実態の読み方や書類の書き分けに迷ったら、応募前の段階で、ぜひ一度整理してみてください。