「エージェントは結局、内定を出させて成約させたいだけなのでは」と思われることは今でも少なくありません。実際、書類選考で見送りになった方から「結果だけ聞かされて、どこが評価されなかったのか分からない」と言われることは、面談の中で今も頻繁にあります。

IT・Web業界を中心に800名以上の転職支援に携わる中で、職務経歴書の実績という「数字」そのものより、その数字が生まれた背景の方が選考結果を左右する場面を数え切れないほど見てきました。今回は、実際にあったやり取りをもとに、私が支援の現場でいつも意識している3つの評価ポイントを具体的に整理してみます。

本記事では、エージェントが書類選考・面接で実際に注目している3つの評価ポイントをご紹介します。

  • 実績の「数字」ではなく、その実績が生まれた背景やプロセス
  • 転職理由と、次に求める環境・役割との一貫性
  • 候補者のスキルと、企業側の採用タイミングとの「温度差」

実際に選考を通過する割合を見ても、書類選考が簡単な関門ではないことは分かります。マイナビ「転職活動実態調査(2025年)」(2024年7月〜2025年6月に転職した20〜50代の正社員500人が対象)では、平均の応募件数13.6件に対して書類選考を通過したのは5.1件で、通過率は37.3%、応募数から見た最終的な内定率は17.0%でした(出典:マイナビ転職「転職活動の平均応募社数は?」)。10件応募して内定に届くのは2件前後という水準です。

書類を通過した求人のうち、さらに半分前後は面接以降で見送りになる計算ですが、そもそも応募の6割以上が書類の段階で止まっています。同じページには一次面接の通過率を約30%とする目安も示されていますが、こちらは調査結果ではなく目安とされている値です。だからこそ、書類の段階で何が見られているのかを押さえておく意味があります。

目次
  1. ① 実績の「数字」より、生まれた背景を見ている
  2. 背景を伝えるために、職務経歴書に足しておきたい一行
  3. ② 転職理由と、次に求める環境との「一貫性」を見ている
  4. 一貫性は「求人選びの理由」まで遡って確認される
  5. ③ 候補者と企業、双方の「温度差」というタイミングのズレ
  6. 企業の採用フェーズによって、見られるスピード感が違う
  7. 書類で止まったとき、エージェントが原因を切り分ける順番
  8. エージェントが企業への推薦文で、実は何を補っているか
  9. よくある疑問に答えます
  10. 書類選考で見送りになった理由を教えてもらえないのはなぜですか
  11. 複数の候補者と比較されている場合、何で差がつきますか
  12. まとめ:書類・面接の前に「背景」と「タイミング」まで準備しておく

① 実績の「数字」より、生まれた背景を見ている

職務経歴書の実績の数字を虫眼鏡で覗き込み、その背後にあるプロセスを確認する様子を表したイラスト

同じ「売上を120%達成」という実績でも、それがチームで担当した案件の一部なのか、一人で企画から関わって作り上げたものなのか、あるいは前任者が仕込んだ土台をたまたま引き継いだだけなのかで、評価はまったく変わってきます。書類上の数字だけを見て「すごい実績ですね」と鵜呑みにする場面は、正直ほとんどありません。

実際にあった例です。同じ「新規契約数120%達成」という実績を書いていた候補者が二人いました。一人はチーム5人体制の営業部に在籍していて、聞いてみると既存顧客からの紹介案件が多かった年にたまたま在籍していただけで、自分の工夫については具体的に語れませんでした。もう一人は、自分で架電リストを作り直し、月200件だった架電数を350件まで増やしたことと、断られた理由を毎週振り返って提案内容を修正し続けたプロセスを、数字を交えて説明できました。書類上の実績はほぼ同じでも、面接後の評価コメントは後者の方が明らかに具体的で、通過率にも差が出ました。

私が面談で必ず聞くのは、「その数字を出すために、具体的に何をしたか」という一点です。同じ実績でも、再現性のある行動として説明できるかどうかで、書類選考の通過率は大きく変わります。逆に数字が控えめでも、プロセスを筋道立てて話せる候補者の方が、面接官の印象に残りやすいというのが私の実感です。

工夫を語れなかった前者の候補者には、その場で「次までに、担当した案件で自分が判断した場面を三つ書き出しておいてください」と宿題を出しました。次の面談では、値引き交渉の可否を自分の判断で決めた場面など、具体的なエピソードを三つ挙げられるようになっており、別の求人への応募では無事に書類通過につながりました。

エンジニア職でも構図は同じです。「アプリのパフォーマンス改善を担当」という同じ一行でも、指示されたクエリの修正をこなしただけなのか、自分でボトルネックを特定してインデックス設計やキャッシュ戦略まで踏み込んだのかで、面接官の受け取り方はまったく違います。コミット履歴やGitHubの中身まで踏み込んだ話は別記事に譲りますが、職務経歴書の一行に「自分がどこまで判断したか」を足すだけで見え方が変わるのは、営業職もエンジニア職も変わりません。

企業側のアンケートでも、数字に表れない部分が判断に影響することは示されています。マイナビキャリアリサーチLab「中途採用状況調査2025年版」(2024年12月16〜19日実施、採用担当者1,500名対象)では、転職回数が多い応募者について、求めていた条件に満たなくても人柄などを理由に採用したケースが多かったと答えた企業が43.7%でした(出典:マイナビキャリアリサーチLab「中途採用状況調査2025年版」)。

ただし、これは転職回数という一つの論点についての回答です。同じ調査の2026年版では、募集時の要件を満たさない場合に採用しないことが多かった企業が62.1%と、前年から7.7ポイント増えています。要件を満たさなければ通りにくいのが基本で、人柄だけでどうにかなる話ではありません。そのうえで私は、条件の線上にいる候補者ほど、人柄や経緯の伝わり方が判断を動かしうると見ています。

背景を伝えるために、職務経歴書に足しておきたい一行

職務経歴書に実績の数字だけを書いている人は多いのですが、「何を」「どのくらいの規模で」「自分がどこまで関わったか」を一行加えるだけで、書類の見え方は変わってきます。たとえば「新規契約数120%達成」だけでなく、「既存顧客275件のリストを自分で再構築し、架電数を1.5倍に増やした結果」のように、行動と規模を添えるイメージです。

面接段階でも同じことが言えます。答えを一問一答で丸暗記するのではなく、自分の行動を数字とセットで語れるように、面談の前に一度口に出して練習しておくと当日の話し方が変わります。実際、書類上は平凡に見えた候補者が、面接でプロセスを詳しく話せたことで評価が一気に上がり、内定につながった例も何度も見てきました。

実績の背景を書くときに、意識しておきたいこと

  • その実績はチームの成果か、個人が主導したものか
  • 前任者や既存の仕組みから、どこまで引き継いだものか
  • 同じ数字を達成するまでに、具体的に何を変えたか

② 転職理由と、次に求める環境との「一貫性」を見ている

次に見ているのは、転職理由と、次に求めている環境や役割がきちんとつながっているかどうかです。例えば「裁量権が欲しくて転職する」と言いながら、応募先が分業化された大規模組織の定型ポジションだと、面接官はそこに違和感を覚えます。

実際に、「裁量権が欲しいので転職したい」と話していた候補者が、分業化の進んだ大手SIerの保守運用ポジションに応募したことがありました。面接官からのフィードバックは「志望動機と応募ポジションが噛み合っていない、条件面だけを見て他社にも同じような考えで応募しているのでは」という厳しいものでした。本人に確認すると、実際にはその会社の待遇の良さだけを見て応募先を決めていて、なぜそのポジションを選んだのかを自分自身でも説明できていませんでした。

この一貫性は、書類選考よりもむしろ面接で厳しく見られます。面接官が最初の数分で必ず確認しているのは、転職理由と志望動機がずれていないかという一点です。

この実感は、企業側の調査でも裏付けられています。doda「採用担当者のホンネ-中途採用の実態調査」(2025年9月8〜11日実施、採用担当者2,000人対象)では、面接で重視するポイント(複数回答)として「受け答えの仕方」51.1%、「誠実さ・素直さ」47.4%に次いで、「転職理由」43.9%、「志望動機」43.1%が上位に並びました(出典:doda「転職で面接官が見ているポイントは?」)。受け答えの巧拙より先に、動機の一貫性そのものが評価項目として明示的に見られているわけです。

逆に、同じように「裁量権を求めて転職したい」と話していた別の候補者は、応募先を選ぶ段階から「意思決定に関われる範囲がどれくらいあるか」を求人票と企業研究の両方で確認し、面接でも「前職ではチームの1メンバーとしてしか意思決定に関われなかったが、御社では要件定義の段階から入れると聞いている」と具体的に話していました。この候補者は面接官から「志望動機が具体的で、入社後のイメージが湧きやすい」という評価コメントをもらい、選考もスムーズに進みました。

私がこれまで見てきた中では、転職理由をきちんと言語化できている候補者ほど、面接後の評価コメントも具体的になる傾向があります。逆に「なんとなく今の会社が合わない」で止まっている場合、面接官からは「志望動機が浅い」という評価がつきやすくなります。

一貫性は「求人選びの理由」まで遡って確認される

面接官が見ているのは転職理由そのものだけでなく、数ある求人の中からなぜこの会社を選んだのかという一段前の判断です。私が面談で候補者と一緒に整理するのは、「今の不満」→「次に求める条件」→「その条件を満たす求人の特徴」という3段階のつながりで、途中が飛んでいないかどうかです。

こうした確認は、候補者を試すためにしているわけではありません。むしろ本人がまだ言語化しきれていない部分を一緒に整理し、面接で自然に話せる形に落とし込むための作業です。最初の面談では転職理由がバラバラだった候補者でも、2〜3回の面談を重ねて一緒に整理するうちに、面接官から高い評価を得られるようになったケースは少なくありません。

  • 今の環境の何に不満があるか、具体的に言えるか
  • その不満の裏にある「次に求める条件」は何か
  • 応募先の求人は、その条件を満たす根拠があるか

③ 候補者と企業、双方の「温度差」というタイミングのズレ

候補者と企業のあいだにある時間軸のズレを、時計とジグザグの隙間で表したイラスト

もう一つ、意外と見落とされがちなのが、候補者と企業側との「温度差」です。候補者がどれだけ優秀でも、企業が求めているタイミングやポジションとずれていると、良い結果にはつながりません。

採用担当が今すぐ埋めたいポジションと候補者が想定している入社時期が、2〜3か月ずれているだけで選考結果が変わることは珍しくありません。急募のポジションに対して「今の会社の引き継ぎに3か月かかる」と伝えると、それだけで見送りになるケースも実際にあります。

逆のパターンもあります。ある候補者は「今の会社をなるべく早く辞めたい」と焦っていましたが、応募先は欠員補充ではなく、来期の体制を見据えてじっくり選考する方針の会社でした。1次面接から内定までに2か月近くかかり、本人は「なぜこんなに時間がかかるのか」と不信感を募らせていましたが、企業側に確認すると、選考の遅さは評価の低さを意味しているわけではなく、最初から慎重に見極める方針を決めていただけでした。

この候補者には、選考のスピード感を気にしすぎず、その期間を企業研究を深める時間として使うよう伝えました。結果的に内定は出て、本人からは「待っている間に他社の選考も並行して進められたので、かえって良かった」という感想をもらいました。候補者側から採用フェーズを見極める簡単な方法の一つが、面接の中で「このポジションはいつから稼働してほしいと考えていますか」と尋ねてみることです。即答で具体的な時期が返ってくる求人は急募である可能性が高く、「体制が整い次第」といった曖昧な答えが返ってくる求人は、計画的な採用である可能性が高いというのが私の実感です。

企業の採用フェーズによって、見られるスピード感が違う

候補者に求められる動き方は、企業がどの採用フェーズにあるかによっても変わってきます。面談の中では、次のような目安で企業側の状況を確認するようにしています。

採用フェーズ企業側の状況候補者に求められる動き
急募欠員や繁忙期対応で、数週間以内の入社を希望している入社時期をどこまで早められるか、正直に伝える
計画的な増員来期の体制強化に向けた採用で、選考に1〜2か月かける焦らず、複数回の面接で理解を深める姿勢を見せる
将来を見据えた育成採用ポテンシャル重視で、じっくり見極める方針選考の遅さを不安に思いすぎず、長期的な成長意欲を伝える

ポイント: 温度差は候補者の実力とは無関係に生まれるものです。見送りの結果を「自分の実力不足」と受け取りすぎず、タイミングの問題である可能性も含めて振り返ってみてください。

書類で止まったとき、エージェントが原因を切り分ける順番

書類選考の通過率が4割弱である以上、見送りは誰にでも起こります。問題は、見送られた理由が開示されないなかで、何を直すかを間違えることです。私が見送りの報告を受けたとき、原因を次の3つに分けて考えます。

  • スキル・経験が求人の必須要件に届いていない
  • 届いているのに、職務経歴書の書き方で伝わっていない
  • 希望条件(年収・勤務形態など)が企業の想定とずれている

切り分けのヒントは、見送りのパターンに出ます。同じ職種・同じ水準の求人で立て続けに止まるなら、書き方よりも要件とのずれを疑います。逆に、要件を満たしているはずの求人でも通らないなら、書類のどこかで強みが伝わっていません。IT・Web業界は求人票に使用言語やツールが具体的に書かれることが多く、必須要件との距離は比較的見極めやすい業界です。

希望年収のずれは、本人が気づきにくい原因です。求人票の想定年収の上限を大きく超える希望を書いていると、中身を読まれる前に条件面で見送られることがあります。これは実力の評価ではないので、希望の出し方を整えるだけで結果が変わります。

もう一つ、転職回数が多い、在籍期間が短いといった点は、書類上ではどうしても懸念として目に入ります。ここは書類を直すというより、エージェントの推薦文で補う領域です。それぞれの転職が何を目的にしたもので、いまの志望につながっているのかを、書類とは別の言葉で企業に伝えられるからです。

エージェントが企業への推薦文で、実は何を補っているか

ここまで、①〜③でエージェントが選考のどこを見ているかを説明してきました。ただ実際の選考では、見た情報をエージェントが企業にどう伝えるかという、候補者からは見えにくい工程がもう一つあります。書類と一緒に企業へ提出する推薦文です。

推薦文で、①〜③の視点を落とし込んでいる3つのポイント

  • 面談で確認した実績の背景(数字だけでは伝わらない役割や工夫)
  • 転職理由と、応募先を選んだ理由がどうつながっているか
  • 入社可能時期と、企業側が求めているタイミングとの関係

背景については、たとえば「新規契約数120%達成」という書類上の数字に対して、「架電リストの再構築や提案内容の週次見直しなど、本人が主導した具体的な行動を面談で確認しています」と一文添えます。数字だけでは伝わらない再現性の部分を、担当者が別途深掘りする手間なく先回りして示すイメージです。

一貫性については、「今の環境で裁量が持てないことへの不満を、本人はこういう行動で解消しようとしてきました。今回の応募もその延長線上にあります」のように、面談で拾った経緯を一行で要約します。書類の職務要約だけでは平坦に見える志望動機も、経緯込みで読むと担当者の印象は変わります。

タイミングについては、「現職の引き継ぎに◯か月かかる見込みだが、本人の意向は最短での入社」のように、候補者本人からは言い出しにくい条件面を先に開示しておきます。温度差は事前の共有で摩擦を防げます。入社時期の話を面接の場で初めて切り出すより、書類の段階で一度すり合わせておいた方が、双方にとって話が早いというのが実感です。

もちろん、これは事実に基づく補足であって、経歴を良く見せるための脚色ではありません。面談で確認できていないことは書きませんし、確認が取れない場合はその旨を明記します。ここを踏み外すと、面接で本人の説明と食い違い、かえって信頼を損ないます。

よくある疑問に答えます

書類選考で見送りになった理由を教えてもらえないのはなぜですか

企業の多くは、見送り理由の詳細を求人媒体にもエージェントにも開示しません。応募が集中する求人ほど、採用担当者は一人ひとりに個別のフィードバックを書く時間を割けず、「他候補者との比較で見送り」という定型文で処理されることがほとんどです。エージェント経由の場合でも聞き出せる情報の粒度は企業次第で、こちらから深掘りして聞いても「社内の基準なので」とだけ返ってくることがあります。理由が分からないまま次に進むのは不安だと思いますが、①〜③で紹介した視点に沿って自分の書類・受け答えを見直す方が、次の選考に向けては近道です。

複数の候補者と比較されている場合、何で差がつきますか

同じポジションに複数人が並んだとき、最終的に差がつくのは①〜③の視点がどれだけ具体的に伝わっているかです。実績の数字が同じでも背景を語れる方、転職理由と志望動機が一貫している方、入社時期の希望が企業の採用フェーズと噛み合っている方が選ばれやすくなります。逆に、スキルセットだけを見れば横並びの候補者同士では、この3点の伝わり方の差が最終判断を左右する場面を何度も見てきました。

まとめ:書類・面接の前に「背景」と「タイミング」まで準備しておく

エージェントは、こうした要素を踏まえた上で、候補者に合った企業やタイミングを提案しています。書類や面接の前に、実績の背景とタイミングまで含めて準備しておくと、転職活動全体がスムーズに進みやすくなります。

選考前に、自分の言葉で説明できるようにしておきたい3点

  • 実績の数字だけでなく、それを出すまでに自分が具体的に何をしたか
  • 今の不満と、次に求める条件、応募先の特徴がひとつながりになっているか
  • 応募先が今どんな採用フェーズにあり、どんなスピード感を求めているか

次にエージェントと話す機会があれば、実績の数字だけでなく、その背景・転職理由の一貫性・希望時期の3点を自分の言葉で説明できるように準備しておくと、選考の見え方が大きく変わるはずです。