「コーディングテストは通ったのに、画面共有の相手が英語で話し始めた瞬間に頭が真っ白になった」——外資系IT企業を受けた候補者から、こういう感想を聞くことがあります。私はIT・Web業界を中心に800名以上の転職支援をしていますが、外資系志望者の失敗を振り返ると、演習量や英語力そのものよりも、どちらを先に仕上げるかという順番を間違えているケースが目立ちます。今回は、コーディングテストと英語面接を同時に準備するときの時間配分と優先順位を、実際にあった相談とともにお伝えします。
今回は、次の内容に沿ってご紹介します。
- 外資系ITの技術選考が、日系企業の技術面接と比べて何を先に見ているか
- コーディングテストの演習量と英語力、それぞれの目安と情報源ごとの幅
- 限られた準備期間で、どちらを先に仕上げるべきかという時間配分の考え方
- 技術を英語で語るための練習方法、英会話力そのものとの違い
目次
外資系ITのコーディングテストと英語面接、両方が同時に来る難しさ
外資系IT企業の選考について調べると、出てくる情報は大きく二つに分かれます。「LeetCodeを何問解けばいいか」というコーディングテスト対策の記事と、「面接でよく聞かれる英語フレーズ」という英語面接対策の記事です。どちらも参考になりますが、実際の選考ではこの二つが別々の日に来るわけではなく、同じプロセスの中で連続して求められます。
具体的には、書類選考を通過した後にオンラインのコーディングテスト(オンラインジャッジ形式が多い)があり、それを通過すると技術面接に進みます。技術面接の相手は日本法人の採用担当だけとは限らず、海外拠点のエンジニアやハイヤリングマネージャーがビデオ通話で参加することが珍しくありません。評価の重心が「解けるか」から「考えを英語で共有できるか」に移る、その切り替わりの場所で足踏みする人を何度も見てきました。
日系企業の技術面接と何が違うのか、重心のズレを整理する
日系企業の技術面接は、人事による一次選考、現場エンジニアによる二次選考、役員による最終選考というように段階を踏み、意思決定も合議制になりやすいのが一般的です。一方で外資系IT企業では、書類選考の直後にコーディングテストを課し、それを通れば現場エンジニアやハイヤリングマネージャーとの技術面接がほぼ即決に近い重みを持つ、という流れをよく見ます。段階が少ないぶん、一つひとつの通過基準がはっきり設定されている印象です。
面接官の顔ぶれも変わります。日系企業では基本的に日本にいる社員が対応しますが、外資系では開発チームの拠点が海外にあるケースも多く、技術面接そのものが最初から英語で行われることがあります。人事担当が日本人でも、技術を評価する相手は日本語を話さない、という前提で準備しておいた方がいい場面が多いというのが実感です。
面接の時間帯にも表れます。相手が米国西海岸や欧州にいる場合、日本時間の夜遅くや早朝に面接が設定されることがあり、候補者が普段より疲れた状態・眠い状態で臨むことになりがちです。時差のある相手と話すという状況そのものが、英語の聞き取りにさらに負荷をかける要因になっている、と感じることもあります。
書類選考の段階でも違いが出ます。日系企業では日本語の職務経歴書だけで進むことがほとんどですが、外資系では英語レジュメの提出を求められる、あるいは日本語のレジュメに加えて英語版を用意しておいた方が心証がいい、という場面によく出会います。ボリュームは日本語の職務経歴書より簡潔にまとめるのが基本で、実績を数字で示す書き方は日本語版と共通しています。
| 項目 | 日系企業(一般的な傾向) | 外資系IT企業(一般的な傾向) |
|---|---|---|
| 選考ステップ数 | 人事一次・現場二次・役員最終など段階が多い | 書類・コーディングテスト・技術面接と段階が絞られやすい |
| 技術評価のタイミング | 面接の中盤〜終盤で確認されることが多い | コーディングテストで序盤に足切りされる |
| 面接官の構成 | 日本にいる社員が中心 | 海外拠点のエンジニア・マネージャーが加わることがある |
| 英語が必要になる場面 | 基本的に発生しない | 技術面接・時にコーディングテストの指示文から発生する |
ポイント: 外資系ITの選考は段階数が少ないぶん、一段階ごとの通過基準がはっきりしています。「なんとなく通過」がなく、コーディングテストと英語での説明力、それぞれに明確な合格ラインがあると考えておいた方が安全です。
コーディングテストの演習量、外資系は形式もアルゴリズム寄りになりやすい
演習量については、「外資系トップ企業を目指すならLeetCodeを200問前後解いた」という声を、Qiitaなどの個人の体験記で見かけます。ただしこれは公的な統計ではなく、あくまで一個人の体験談です。正解の問題数というものは存在しないため、目安として受け止めるのが適切だと思います。
それより実務的なのは時間配分の感覚です。コーディング面接は45分から60分で設定されることが多く、Mediumレベルの問題に15分から20分、Hardレベルの問題には最大30分ほど使う、という時間の使い方を現場でよく聞きます。解けるかどうかより、時間内に方針を伝えて手を動かし切れるかが問われている、と考えた方が対策の方向性が定まります。
演習の組み方としては、配列・文字列、木・グラフ、動的計画法といった頻出分野を満遍なく回すより、まず配列・文字列とハッシュマップ周りを固めて、そこから木・グラフに広げるという順番の方が、序盤で足踏みしにくいという印象があります。加えて、一人で黙々と解く演習だけでなく、他の候補者や同僚とタイマーを共有して交互に出題し合う模擬面接を数回挟んでおくと、本番特有の「見られながら考える」緊張感に慣れておけます。
形式についても、外資系は規模の大きい企業ほどアルゴリズム中心のオンラインジャッジに寄りやすく、スタートアップやスケールアップ規模の企業では実務に近い持ち帰り課題やペアプログラミングが増える、という傾向を感じています。ライブコーディング・オンラインジャッジ・ペアプログラミングそれぞれで何を練習すべきかは、以前コーディングテストで落ちる人に共通する準備不足という記事で形式別に詳しく書きました。外資系特有の論点はこの記事に絞るので、形式ごとの基本的な練習方法はそちらを参照してください。
英語の問題文ならではのつまずき方、制約条件の読み違え
コーディングテストの実力自体は十分でも、問題文が英語だと制約条件の読み違えで失点する人がいます。「at least」と「at most」、「unique」や「distinct」のような単語一つで境界条件が変わってくるため、日本語で解いていれば見落とさない条件を読み飛ばしてしまうことがあります。読解力というより、制約条件だけは二度読みしてから書き始める習慣をつけているかどうかの差だと感じています。
対策として勧めているのは、問題文の制約条件部分を自分の言葉で日本語に言い換えてからコードに着手する、というワンクッションです。特に配列の範囲が0始まりか1始まりか、空の入力をどう扱うかといった細かい前提は、与えられているサンプル入出力を使って自分の理解が合っているか検算してから書き始めると、後半で手戻りする回数が減ります。オンラインジャッジ形式では提出回数に制限があることも多いため、この一手間が結果的に時間の節約になります。
技術面接で問われる英語力、TOEICは何点あればいいのか
英語力の目安についても、情報源によって幅があります。JAC Recruitmentは技術職について「TOEIC700点程度が業務に支障をきたさないレベルの目安」としている一方、ELTの調査ではIT・Tech業界はTOEIC800点以上、CEFRでいうB2(専門分野について詳細に議論できる水準)が目安とされています(出典:JAC Recruitment「外資系企業へ転職するために英語力はどれくらい必要?」、ELT「外資系企業に必要な英語力は?業界別TOEIC・IELTS・Versantスコア目安表」)。
700点台と800点台、どちらが正しいというより、企業や職種、海外拠点との関わり方の深さによって必要な水準が変わるというのが実態に近いと感じています。日本法人向けの受託開発が中心で日本人マネージャーの下で働くポジションなら700点台でも選考を通過できますし、逆にグローバルチームに直接組み込まれて日常的に英語でのコードレビューやスタンドアップが発生するポジションなら、800点台でも面接で苦戦することがあります。
ELTの目安表ではTOEICだけでなくIELTSやVersantのスコアも併記されていますが、どの指標であっても共通しているのは、リスニングやリーディングの総合点よりも、自分の専門分野について詳しく説明できるかという一点に集約される、という点です。TOEICのスコアが高くても、技術的な内容を英語で語る練習をしていなければ、面接ではスコアどおりの手応えを感じにくいというのが現場での実感です。
両立の時間配分、技術力を土台に英語を積み上げる考え方
ここまでの情報を踏まえたうえで、限られた準備期間をどう配分すればいいのか。私が現場で見てきた実感としては、コーディングテストが足切りライン、英語はその先に積み増していくものという構造で捉えるのが近いと思っています。どれだけ流暢に英語で自己紹介できても、オンラインジャッジで時間内にコードを提出できなければ、その先の英語面接にたどり着くことすらありません。
TOEICを605点から780点に押し上げるまで8か月、その一方でLeetCodeは息抜き程度に20問だけ——外資系クラウドインフラベンダーへの応募を控えていたHさん(仮名、35歳・経験11年のバックエンドエンジニア、国内BtoB SaaS企業の自社開発チームに在籍)が、実際にかけていた準備の配分です。英会話スクールに週2回通い、点数として結果が見えやすい英語対策を優先していました。
1社目の選考ではオンラインジャッジ形式のコーディングテスト(60分でMedium2問・Hard1問)を受け、Mediumを1問解いたところで時間切れになり、英語面接にたどり着く前に不合格通知が届きました。伸ばしたはずの英語力を見せる機会自体が来なかった、という結果です。
準備の配分を見直し、平日は1日1問、45分のタイマーをかけてLeetCodeを解く習慣に切り替えました。英語の勉強は通勤中に、自分の解法を英語で説明する音声を録音してそれを聞き返す15分のシャドーイングだけに絞っています。文法の正確さより、考え方を短い文に区切って話す練習を優先した形です。2か月後に応募した2社目では、オンラインジャッジを通過し、技術面接では海外拠点のシニアエンジニアとビデオ通話で実装方針を英語で説明する場面がありました。
途中で文法を間違えたまま話し続けてしまった場面もあったそうですが、面接官からは「That approach makes sense, let’s move on(その方針で問題ない、次に進みましょう)」と返され、拍子抜けするほどあっさり次の質問に進んだといいます。文法の正確さより先の話を面接官が求めていた、ということが後から振り返ってよく分かった、とHさんは話していました。この選考は無事に内定まで進んでいます。
Hさんのケースが典型的なのは、英語力を伸ばした実感は点数として可視化されやすく達成感を得やすい一方、コーディング演習は地味で後回しにされやすい、という優先順位のねじれです。TOEICのスコアは努力の証として分かりやすいのですが、選考の最初の関門はほとんどの場合コーディングテストです。そこを通らなければ、英語力を発揮する場面そのものが訪れません。
私が候補者に勧めている配分は、準備期間の6〜7割をコーディング演習、残りを英語の「技術を語る型」づくりに使うという比率です。ただし英語は毎日短時間でも触れ続けないと感覚が鈍るため、演習期間中も1日15分程度のシャドーイングや音読は並行して続けてもらいます。順番に区切るというより、比重を大きくずらしながら両方を並走させる、というのが実際に効いた進め方です。
準備にかけられる期間によっても、重心の置き方は変わってきます。目安として、次のような配分で相談を受けることが多いです。
| 準備期間 | コーディング演習 | 英語対策 |
|---|---|---|
| 1か月 | ほぼ全時間を演習に振り切る(1日2〜3問) | 詰まったときの定型フレーズ暗記のみ |
| 3か月 | 前半1.5か月を演習中心にし、後半は仕上げに回す | 前半は毎日15分の音読・シャドーイングを継続、後半で技術説明の型を仕込む |
| 6か月以上 | 前半で基礎を固め、後半は模擬面接形式に切り替える | 基礎の音読を早期から習慣化し、後半は英語での模擬面接を数回組み込む |
もう一つ考慮したいのは、自分がどちらに寄っているタイプかという点です。長年SIerや受託開発で技術力を磨いてきたものの英語には触れてこなかった人は、上の配分よりさらに英語側に時間を割いた方がいいですし、逆に留学経験があって英語には抵抗がないもののアルゴリズム問題に不慣れな人は、コーディング演習にもっと時間を寄せた方が効率的です。この記事の配分はあくまで平均的な出発点で、自分の現在地からのズレを見て微調整するのが実務的だと思います。
面接官が外国人の場合の練習方法、シャドーイングと技術説明の型
面接官が外国人エンジニアの場合、評価されているのは発音や文法の正確さではなく、考えているプロセスをリアルタイムで共有できるかです。日本語でのライブコーディングと同じで、黙って書き進めてしまうと「何を考えているか分からない」という理由で評価が下がります。英語の場合はこれに輪をかけて、言葉に詰まった瞬間に黙り込んでしまう人が多いという印象です。
対策として効果を感じているのは、瞬間英作文の練習量を増やすことよりも、自分が普段使っている技術用語・言い回しを短いフレーズとして仕込んでおくことです。詰まったときに使える定型フレーズ(「まず境界条件から考えます」「総当たりで実装してから最適化します」に相当する英語表現)をいくつか用意しておくだけで、沈黙する時間が大きく減ります。
技術面接向けの英語練習で、優先度が高いものは次の3つです。
- 自分の過去の解答・実装を英語で説明し直し、声に出して録音する(シャドーイングの材料を自作する)
- 詰まったときに使う定型フレーズを5〜10個、事前に暗記しておく
- 逆質問を2〜3パターン英語で用意し、聞き取れなかったときの聞き返しフレーズも用意する
英語面接でよく聞かれる質問と、逆質問の準備の仕方
英語面接でよく聞かれる質問は、実は日本語の技術面接とそれほど変わりません。「Tell me about a project you’re proud of(印象に残っているプロジェクトを教えてください)」「Why do you want to work in a global team?(なぜグローバルなチームで働きたいのか)」のような、経歴・志望動機系の質問が中心です。ここは事前に文章として準備できる部分なので、丸暗記ではなく要点を3つ程度のメモにしておき、質問のニュアンスに合わせて組み替えられるようにしておくと、棒読みにならずに済みます。
厄介なのはむしろ、コーディングの最中に飛んでくる深掘りの質問です。「Why did you choose this data structure?(なぜこのデータ構造を選んだのか)」「What’s the time complexity here?(計算量はどれくらいか)」といった質問は、答えの正しさよりも、その場で考えを組み立てて話せるかを見ています。日本語の技術面接で聞かれる質問をそのまま英訳して、自分なりの回答を先に用意しておくと、本番での負荷がかなり下がります。
逆質問も準備しておくべき場面です。「How is the team structured across time zones?(チームは時差をどう分担しているか)」「What does the on-call rotation look like?(オンコール当番の頻度はどれくらいか)」のような、外資系特有の働き方に踏み込む質問は、志望度の高さと同時に、リモートワークや時差のある働き方への理解も伝わります。聞き取れなかった場合に備えて、聞き返しのフレーズもセットで用意しておくと安心です。
内定後の条件交渉も、英語で行われることがある
技術面接を突破した後の話になりますが、外資系IT企業では条件交渉の相手が日本法人の人事担当ではなく、海外本社の採用担当やハイヤリングマネージャーになることがあります。オファーレターが英語で届き、ベース給与・ボーナス体系・ストックオプションの条件について英語で質疑応答する場面が出てくる、というケースです。
技術面接を乗り越えた後だからと油断していると、ここでも聞き取りづらさから条件の細部を確認しきれないまま合意してしまうことがあります。金額や条件に関わるやり取りだけは、口頭で終わらせずメールなど書面で再確認するようにすると、聞き違いによる後々のトラブルを避けやすくなります。エージェント経由で応募している場合は、この段階の英語のやり取りをエージェントに整理してもらうことも選択肢に入ります。
よくある質問
TOEICの点数がまだ低い場合、応募自体を諦めるべきですか。 点数だけで足切りされるかどうかは企業によって差があります。ただ、点数が低いことよりコーディングテストの通過が優先されるため、英語対策より先にコーディング演習に時間を使うことを勧めています。技術力さえ通れば、英語面接の場で挽回できる余地は十分にあります。
コーディングテストが英語の指示文で出題される場合、どう対策すればいいですか。 出題文自体は専門用語が中心で、日常会話ほど複雑な構文ではありません。制約条件・入出力例を読み解く英文のパターンは限られているので、LeetCodeなどの問題文を日本語訳せずそのまま読む練習をしておくと、本番で戸惑いにくくなります。
面接官の英語が聞き取れなかったとき、どうすればいいですか。 分かったふりをして進めるのが一番危険です。「Could you say that again, please?」のような聞き返しフレーズを最初から使うと決めておくと、聞き取れないこと自体が評価を下げる要因にはなりにくいです。実際、聞き返しを恐れて誤った前提のままコードを書き始め、途中で作り直す羽目になった候補者を何人も見てきました。
英語力は入社してから伸ばせるものでしょうか。 チームの構成次第です。日本人マネージャーがいて日常のやり取りが日本語中心なら、入社後に業務をこなしながら伸ばしていけるケースが多いと感じています。一方でグローバルチームに直接組み込まれるポジションでは、入社時点である程度の説明力が前提になるため、選考時の水準がそのまま入社後の負荷に直結します。
英語の職務経歴書は自分で書くべきですか、翻訳サービスに頼ってもいいですか。 機械翻訳の下訳から始めても構いませんが、そのまま提出するのは避けた方がいいです。実績を数字で示す部分や技術用語は自分で見直し、面接で同じ内容を口頭で説明できる状態にしておく必要があります。書いた本人が読めない英語のレジュメは、面接で深掘りされた瞬間に矛盾が露呈しやすいというのが実感です。
まとめ、優先順位は演習量でも英語力でもなく「どちらを先に」
外資系ITの選考を「コーディングテスト対策」か「英語面接対策」のどちらかだけで検索すると、両方を同時に求められる現実とはズレた情報にたどり着いてしまいます。技術力が足切りライン、英語はその先に積み上げるものという構造を理解しておけば、限られた準備期間をどちらに重く配分すべきかは自然と決まってきます。この記事で一番伝えたかったのは、演習量でも英語力でもなく、この優先順位の付け方そのものです。




