「契約形態を、準委任から派遣に切り替えたいんです」——客先の法務担当からそう告げられて戸惑ったという相談を、この半年で何件も受けました。

私はIT・Web業界を中心に800名以上の転職支援に携わっていますが、この手の打診は契約更新のタイミングに集中して起きる傾向があり、単なる事務手続きではなく現場の指揮命令の実態が準委任契約の建前と食い違ってきたサインであることが少なくありません。今回は、なぜ客先が切り替えを打診してくるのか、派遣契約に切り替わると何が変わるのか、そして転職を検討すべきタイミングはどこかを、現場で見てきた実例を交えてお伝えします。

今回は、次の内容に沿ってご紹介します。

  • 客先が「派遣契約への切り替え」を打診してくる、指揮命令の実態面での意味
  • 切り替えが起きる具体的な3つのきっかけと、現場で実際にあったケース
  • 派遣契約に切り替わったときに変わる手取りと「3年ルール」という期限
  • 「労働契約申込みみなし制度」に期待できない理由と、転職を検討すべき判断基準
目次
  1. 客先からの「派遣契約への切り替え」打診が意味すること
  2. 切り替えを拒否したら、今の現場にいられなくなるのか
  3. SES(準委任)と派遣、指揮命令の違いを整理する
  4. 所属会社は「労働者派遣事業許可」を持っているか
  5. なぜ今、切り替えの打診が来るのか——現場で見る3つのきっかけ
  6. 派遣契約に切り替わると何が変わるか——手取りより先に効いてくる「3年ルール」
  7. 期限が来たとき、所属会社には「雇用安定措置」の義務がある
  8. 日々の働き方にも、細かい変化がついてくる
  9. 「労働契約申込みみなし制度」に期待してはいけない理由
  10. 打診がなくても、偽装請負を自分で見分けるサイン
  11. 客先からの直接指示に違法性を感じたら、相談先はどこか
  12. 打診を受けたら確認すべきこと、転職を検討すべきサイン
  13. まとめ

客先からの「派遣契約への切り替え」打診が意味すること

準委任契約のSESは、業務の進め方の指示を出すのは所属会社であって客先ではない、という建前で成立しています。実際には客先の担当者が朝会で直接タスクを割り振り、勤怠まで管理しているケースが珍しくなく、この建前と実態のズレが偽装請負と呼ばれる状態です。

現場で働いている本人からすると、客先の担当者から直接指示されるのはむしろ当たり前で、それの何が問題なのか実感しにくいという声もよく聞きます。契約書の建前と日々の実態がズレていること自体は、エンジニア個人の落ち度ではありません。ただ、そのズレを客先側が問題視し始めたタイミングこそが、今回のテーマである「切り替えの打診」なのです。

客先が突然「派遣契約に切り替えたい」と言ってくるのは、この建前と実態のズレを客先自身が意識し始めたサインであることが多いと私は見ています。指揮命令の実態を契約の形に合わせにいく動きであり、裏を返せば今までの働き方がグレーだったことを客先側が認めたに等しい場面でもあります。

この打診を「事務手続き上、契約が安定していないんだな」という程度に受け止めて聞き流してしまう方もいますが、契約形態が変わるということは、自分の働き方の前提そのものが変わるということです。所属会社の営業も、客先から一方的に言い渡されて板挟みになっているだけのことが多く、打診の背景まで説明してくれるとは限りません。

だからこそ、打診を受けたエンジニア自身が「なぜ今、この話が来たのか」を自分で解釈できるようにしておく必要があります。次の章で、SES(準委任)と派遣の違いを整理してから、派遣に切り替わると具体的に何が変わるのかを見ていきます。

切り替えを拒否したら、今の現場にいられなくなるのか

「派遣契約になるくらいなら、このままの形でいたい」と拒否したい気持ちも分かります。ただし契約を結ぶかどうかは所属会社と客先の間で決まることで、エンジニア個人が拒否できる立場にはありません。拒否したい理由がある場合は、所属会社に事情を伝えて交渉することはできますが、客先が偽装請負のリスクを取ってまで準委任のまま続けることを選ぶ可能性は高くありません。結果として、切り替えに応じないなら契約自体が終了し、現場を離れることになるケースのほうが多いというのが実感です。

SES(準委任)と派遣、指揮命令の違いを整理する

準委任・請負・派遣の3つは、契約書の文言だけを見ると似ていますが、指揮命令権の所在と契約の対象がまったく違います。

契約形態指揮命令権契約の対象期間制限
準委任(SES)所属会社(自社)にある建前業務の遂行そのものなし
請負所属会社(自社)にある成果物の完成なし
派遣客先(派遣先)にある労働力の提供事業所単位・個人単位ともに原則3年

表からも分かる通り、準委任契約では客先が直接指示を出す権限は本来ありません。それにもかかわらず客先の担当者が日々のタスク配分や勤怠管理まで踏み込んでいる状態が、いわゆる偽装請負です。昭和61年労働省告示37号は、業務の遂行方法・労働時間・秩序維持などへの指示を自ら行っているかどうかで、実態が労働者派遣に当たるかを判断すると定めています(参照:厚生労働省「疑義応答集」)。

告示が見ているポイントを私なりに要約すると、大きく2つです。ひとつは、業務の進め方・評価・労働時間・職場の秩序維持について、指示や管理を所属会社が自ら行っているかどうか。もうひとつは、業務に必要な資金や設備を所属会社が自らの責任で用意し、単に人手を貸しているだけの状態になっていないかどうかです。客先の朝会で直接タスクを割り振られ、客先の入退室システムで勤怠を管理されている時点で、この1つ目の要件からすでに外れかけていると考えたほうがいいでしょう。

客先はこの告示のラインを超えていることに気づくと、契約を偽装請負のまま放置するリスクと、派遣契約に切り替えて適法化するコストを比較し始めます。偽装請負の実態は無許可での労働者派遣とみなされ得るため、所属会社が労働者派遣事業の許可を持たないまま続けていれば労働者派遣法上1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になり得ます。放置するリスクは決して小さくありません。切り替えの打診は、その比較の結果として出てくる選択肢のひとつに過ぎません(判定要素の詳細はLASSICのコラムに整理されています)。

所属会社は「労働者派遣事業許可」を持っているか

見落とされがちですが、派遣契約を結ぶには所属会社が厚生労働大臣の許可を得た労働者派遣事業者である必要があります。以前は届出だけで済む「特定労働者派遣事業」という区分もありましたが、2015年の法改正で廃止され、現在はすべて許可制に一本化されています。

切り替えの打診を受けたら、所属会社が派遣許可番号(派〇〇-〇〇〇〇〇〇の形式)を持っているかを確認しておくと安心です。SES専業でやってきた会社の中には、許可の取得自体をこのタイミングで急いで進めているところもあり、その場合は契約書の締結が思ったより遅れることもあります。

なぜ今、切り替えの打診が来るのか——現場で見る3つのきっかけ

打診が来るタイミングは契約更新月と重なることが多いですが、きっかけそのものはいくつかのパターンに分かれます。事前に何のシグナルもなく、ある日突然「実は」と切り出されることはむしろ少なく、振り返ると小さな前触れがあったというケースがほとんどです。

私が相談の中でよく聞く、切り替えの打診が出てくるきっかけは主に3つです。

  • 客先に労働基準監督署の是正指導が入り、指揮命令の実態を洗い直した
  • 客先の法務・コンプライアンス部門が定期監査で契約書と実態の乖離に気づいた
  • 営業担当から「契約書を巻き直したい」と急に連絡が来て、理由を聞くと客先都合だった

実際にあった例では、物流会社の倉庫管理システムを保守していた33歳・経験9年のKさん(独立系SESで客先常駐)が、契約更新の2か月前に営業から「客先の法務が契約書を見直したいと言っている」と連絡を受けました。

詳しく聞くと、客先の情報システム部門長が交代し、新任の部長が外部人材の契約形態を一括点検した結果、Kさんを含む常駐エンジニア数名の実態が準委任の建前と合っていないと指摘されたことが分かりました。Kさんは客先の朝会で直接タスクを割り振られ、勤怠も客先の入退室システムで管理されていたため、切り替え自体は妥当な判断でした。

Kさんは最初、「単価が下がるんじゃないか」「契約が終わるという意味なのか」と不安になり、私のところに相談に来ました。実際に営業に確認すると、月単価も業務内容もほぼ変えないまま、契約書の名目だけを派遣契約に直すという話でした。契約が終わるわけではないと分かって一度は安心していましたが、私が3年ルールの話をすると表情が変わったのを覚えています。

3つのきっかけには、それぞれ客先側の温度差があります。労基署の是正指導が入ったケースは、期限を切って対応を求められるため切り替えが急ピッチで進みます。法務・コンプライアンス部門の定期監査によるケースは、監査のサイクル(半年〜1年ごと)に合わせて淡々と進むため、打診から実施まで数か月の猶予があることが多いです。一方、営業から急に「契約書を巻き直したい」と言われるだけのケースは、理由を深掘りしないと本当のきっかけが分からないまま契約だけが変わってしまうので、私は必ず理由を営業経由で確認するようお伝えしています。

ここで多くの方が見落とすのは、切り替えは客先にとっての適法化であって、自分の待遇改善を意味しないという点です。むしろ、それまで曖昧だった「いつまでこの現場にいられるか」という問いに、法律上の期限という明確な答えが付くようになります。次の章で、派遣契約に切り替わったときに実際に何が変わるのかを見ていきます。

派遣契約に切り替わると何が変わるか——手取りより先に効いてくる「3年ルール」

派遣契約への切り替えで最初に気になるのは手取りの変化だと思います。所属会社の請求額が客先都合で変わるわけではないので、月単価そのものは据え置かれることが多いというのが私の実感です。Kさんのケースでも、月単価はほぼ据え置きのまま契約形態だけが変わりました。

ただし、所属会社が「派遣元」としての社会保険料負担・派遣元責任者の配置・キャリア形成支援制度の整備といったコストを新たに負うことになるため、これを理由に給与テーブルやみなし残業時間の扱いが見直される会社も一部にあります。実際に相談を受けた別のケースでは、月単価85万円の現場で契約形態だけが切り替わったはずが、翌年の昇給タイミングでみなし残業時間が20時間から30時間に増やされ、実質的な時給換算では目減りしていたということがありました。切り替えの打診を受けたら、単価の話だけで終わらせず、給与テーブル自体に変更がないか所属会社に書面で確認しておくと安心です。

手取りよりも先に効いてくるのが、労働者派遣法が定める期間制限です。派遣社員として同じ事業所で働けるのは原則3年までで、これは「事業所単位」と「個人単位」の両方でカウントされます。事業所単位の制限は客先が過半数労働組合等の意見を聴けば延長できますが、個人単位の制限(同一の組織単位、つまり同じ課やチームでの就業は3年まで)は延長できません。

ポイント: 準委任のときは「契約が更新される限り同じ現場にいられる」働き方でしたが、派遣に切り替わった瞬間から「最長3年で今の組織単位を離れなければならない」という期限付きの働き方に変わります。

3年が経過したあとも同じ客先で働き続けたい場合、所属会社は3か月と1日以上のクーリング期間を空けてから再び派遣する、あるいは客先の別の部署(別の組織単位)に配置し直すといった対応を取ることになります。Kさんの場合も、営業からは「3年経ったら一度別の部署に移すか、他の現場を探すことになる」とだけ説明され、具体的な調整は契約が近づいてから、という状態でした。

つまり派遣契約への切り替えは、客先都合の適法化であると同時に、あなた自身のキャリアに期限を区切る出来事でもあります。今の現場に長く腰を据えるつもりだった方ほど、この期限の意味を軽く見ないほうがいいと私は考えています。

期限が来たとき、所属会社には「雇用安定措置」の義務がある

一つだけ、派遣に切り替わることで得られる保護もあります。労働者派遣法30条は、3年で同一の組織単位を離れることになる有期雇用の派遣労働者(特定有期雇用派遣労働者)に対して、派遣元(所属会社)が雇用安定措置を講じるよう義務づけています。継続1年以上の見込みの段階では努力義務ですが、継続3年の見込みになった時点で法律上の義務に切り替わります。具体的には、客先への直接雇用の依頼、新たな派遣先の提供、無期雇用への転換、その他の安定した雇用を確保する措置のいずれかです。

ただし、実務では「新たな派遣先の提供」で済まされることがほとんどで、希望する条件の現場が用意される保証はありません。準委任契約のときのように、営業に希望を伝えて案件を探してもらう構図と大きくは変わらないというのが正直なところです。制度があること自体は知っておく価値がありますが、それに任せて受け身でいるより、自分から動いたほうが選べる選択肢は広がります。

日々の働き方にも、細かい変化がついてくる

3年ルール以外にも、切り替え後は日々の働き方の細部が変わります。派遣契約では、就業条件明示書という書類で業務内容・就業場所・指揮命令者・抵触日(3年の期限日)を明示することが所属会社に義務づけられており、Kさんも初めて自分の抵触日を書面で確認しました。残業時間の上限を定める36協定も、客先ではなく所属会社(派遣元)のものが適用されるため、客先の他の社員と残業ルールが異なる場面が出てくることもあります。

準委任契約のときは、こうした書類上のやり取りをほとんど意識せずに働けていた分、切り替えは「急に書類で管理される働き方になった」という感覚を伴うことが多いようです。私はこれを悪いこととは思っていません。むしろ、指揮命令者や就業条件が書面で明確になることで、後になって「言った・言わない」の水掛け論になりにくくなるという利点もあります。

「労働契約申込みみなし制度」に期待してはいけない理由

偽装請負の状態が是正されると、客先から直接雇用の申し込みがあったとみなされる——労働者派遣法40条の6の「労働契約申込みみなし制度」を聞いて、期待した方もいるかもしれません。

ただしこの制度は、偽装請負が是正された時点で自動的に発動するものではありません。制度が適用されるには労働者本人が客先に対して申し込みを承諾する意思表示をする必要があり、しかも承諾できる期間には1年という制限があります。加えて客先が偽装請負であることを知らなかった(善意無過失)場合は、そもそも適用されません。

実務上さらにハードルになるのが、承諾の意思表示です。客先に直接雇用を申し込むということは、今お世話になっている所属会社との関係を清算し、これまで一度も直接の雇用契約を結んだことのない客先に賭けるという判断を、自分ひとりで下すことを意味します。給与水準も福利厚生も分からないまま踏み切れる方は、私が見てきた範囲ではほとんどいません。

客先が切り替えを打診してくる場面のほとんどは、みなし雇用が発動する前に契約形態そのものを是正してしまうケースでもあります。待っているだけでは発動しない制度だという点を、相談の中で必ずお伝えするようにしています。

打診がなくても、偽装請負を自分で見分けるサイン

ここまでは客先から打診が来た後の話をしてきましたが、打診自体がまだなくても、自分の働き方が偽装請負に近づいていないかは自分で見分けられます。法務記事のようにすべての判定要素を網羅する必要はなく、現場感覚として次のようなサインがそろっているかを見れば十分です。

私が「これは実態が乖離しているな」と感じる、よくあるサインです。

  • 客先の社員から、作業の優先順位や進め方を毎日のように直接指示される
  • 有給取得や始業・終業時刻の申請を、所属会社ではなく客先のシステムで管理されている
  • 客先の人事評価の面談やフィードバックの場に、実質的に組み込まれている
  • 所属会社の上司や営業が、自分の日々の作業内容をほとんど把握していない

これらが2つ以上当てはまる状態が半年以上続いているなら、いずれ客先か所属会社のどちらかが是正に動く可能性が高いと考えていいでしょう。打診を待つ前に自分から所属会社に状況を伝えてみるのも一つの手ですが、私の経験では、伝えたところで契約形態がすぐに変わることは少なく、結局は今回お伝えしたのと同じ流れをたどることがほとんどです。だとすれば、サインに気づいた時点で市場価値を確認し始めても早すぎることはありません。

客先からの直接指示に違法性を感じたら、相談先はどこか

派遣契約への切り替えを打診される前の段階で、「これは指揮命令として行き過ぎているのでは」と感じる方も少なくありません。その場合の相談先は、契約の相手方である所属会社の窓口のほか、都道府県労働局の総合労働相談コーナーがあります。偽装請負の疑いについても相談を受け付けており、匿名での相談も可能です。

ただし、労働局への相談は是正指導につながることはあっても、あなた個人の待遇や配属先をその場で変えてくれるものではありません。是正の結果、契約形態が変わるとしても、それには数か月単位の時間がかかりますし、変わった先が今回お伝えした派遣契約であれば、結局3年という期限が生まれることに変わりはありません。相談窓口は状況を是正するための手段であって、自分のキャリアを前に進める手段ではないと割り切っておくと、期待外れに落胆せずに済みます。

相談したことが客先や所属会社に伝わって関係が悪化するのではないかと心配する方もいますが、労働局への相談自体は匿名で受け付けてもらえますし、是正指導も「誰の相談を受けて動いたか」までは開示されない運用になっています。それでも、相談してから状況が変わるまでの数か月間は、これまでと同じ現場で同じ相手と働き続けなければならないという現実は残ります。この期間をどう過ごすかまで考えた上で、相談するかどうかを判断するといいでしょう。

打診を受けたら確認すべきこと、転職を検討すべきサイン

派遣契約への切り替えを打診されたら、契約内容そのものより先に、自分の働き方の実態を確認することから始めてください。

打診を受けたときに確認しておきたいポイントです。

  • 今の現場での指揮命令が、すでに客先から直接出ている状態かどうか
  • 派遣契約への切り替え後、個人単位の3年ルールがいつから起算されるか
  • 単価・給与が切り替え前後でどう変わるか、所属会社に書面で確認したか
  • 自分自身がこの現場・この客先にあと何年関わりたいと考えているか

このうち最後の一点が、実は一番重要です。派遣契約に切り替わって3年ルールの期限が見えてくると、否応なく次の現場を探す時期が来ます。契約更新のたびに単価交渉で粘るという従来のやり方が使えなくなるため、SESの案件ガチャに振り回されないための動き出すタイミングの記事で書いたような、契約更新月を基準にした判断がそもそも成立しなくなります。

1つ目と2つ目の確認項目は、切り替えの妥当性を判断するための材料です。指揮命令がすでに客先から直接出ているなら、切り替え自体は自然な流れであり、慌てて拒否する必要はありません。むしろ問題は、切り替え後に個人単位の3年ルールがいつから起算されるかを、営業がその場で答えられないケースが多いことです。入社日から数えるのか、現在の現場に配属された日から数えるのかで、期限の実感が数年単位で変わってきます。曖昧なまま流されず、必ず起算日を書面で確認してください。

営業への確認は、口頭より具体的な言葉を選んだほうが答えが返ってきやすくなります。「抵触日はいつになりますか」「就業条件明示書はいつ頂けますか」「3年経った後、この現場に残れる見込みはどのくらいありますか」の3つを順番に聞くと、営業がどこまで客先と詰めているかがすぐに分かります。即答できずに持ち帰るようなら、切り替えの話がまだ社内でも固まっていない段階だと判断していいでしょう。

3つ目と4つ目の項目は、切り替えそのものへの賛否ではなく、その先の身の振り方を考えるための材料です。単価が据え置かれても給与テーブルやみなし残業の扱いが変わることは先ほど触れた通りですし、何より「あと何年この客先にいたいか」という問いに正直に答えると、3年という期限が短すぎるのか、ちょうどいい節目なのかが見えてきます。短すぎると感じるなら、期限が来る前提で今のうちから次の一手を考えたほうが、慌てて動くより条件面で有利に進められます。

逆に、この客先との関係が良好で、指揮命令の実態を含めて長く働きたいと思える相手なら、派遣契約という不安定な形を経由するより、客先からの正社員登用を交渉する道を先に探ったほうが早いこともあります。

私がこれまで見てきた中で、切り替えの打診をきっかけに転職を決めた方の多くは、3年という期限を逆算して「その前に市場価値を確かめておこう」と動き始めていました。もし今の現場で客先からの直接指示や勤怠管理に心当たりがあり、かつ会社が労基署対応や法務の相談窓口を用意していないなら、社内で相談を待つよりも先に、自分の職務経歴書を市場に出してみることをおすすめします。

まとめ

派遣契約への切り替え打診は、客先が指揮命令の実態と契約の建前のズレに気づいた結果として出てくるものです。違法な状態を是正する動き自体は歓迎すべきですが、そこで生まれる「3年」という期限は、あなたの意思とは関係なく降ってきます。

偽装請負を扱う記事の多くは、企業側がどう予防し、どう是正するかという視点で書かれています。それはそれで大切な情報ですが、打診を受けた本人にとっては「自分がこれからどう動けばいいか」のほうがずっと切実なはずです。契約が適法になること自体はエンジニア個人にとって不利益ではありませんが、そこに紐づく期限や労働条件の細部まで自分の目で確認する人は、実はそれほど多くありません。

私がこの記事で一番伝えたいのは、みなし雇用のような制度に期待して待つのではなく、期限が見えた時点で自分から動き出すという姿勢です。契約形態の変化は、キャリアを見直す絶好のタイミングでもあります。

Kさんはその後、3年ルールの期限を逆算して1年半ほどで転職活動を始め、今の客先と業務内容が近い自社開発企業から声がかかりました。「派遣に切り替わったこと自体は嫌じゃなかったんです。ただ、期限があると分かった時点で、自分で選んでおいたほうがいいと思っただけです」という言葉が、この記事で一番伝えたかったことをそのまま言い表していると思います。

打診が来た直後は、契約形態の名前が変わることばかりに気を取られがちですが、実際に自分の働き方を左右するのは、その先にある期限と条件の細部です。打診を受けたら、まず自分の働き方の実態を確認し、その上で次の一手を早めに考え始めてください。